法務省出入国在留管理庁が今年3月に公表したデータによれば、従業員数300人以下の日本の中小企業に就職した留学生は全体の66.3パーセントと、中小企業は意外に人気だ。では、選ばなかった人の理由はなんだったのか。そこに留学生と中小企業の残念なすれ違いがあった。
外国人留学生の人材紹介などを展開するASIA Linkは、2025年度卒業予定の留学生を対象に、従業員300人以下の中小企業への就職に関する調査を実施した。そのうち40人(約87パーセント)が中小企業に応募していた。日本人学生の応募は54.2パーセントなので、ずいぶん割合が高い。応募した留学生40人に理由を尋ねると、「やりたい仕事に就ける」、「海外・グローバル展開している」、「会社の雰囲気がよい」がトップ3で、これは2023年度、2024年度の調査を通じて変わっていない。

応募しなかった人に理由を尋ねると、前年まではランクが低かった「給与・待遇がよくない」が1位になった。これは昨今の不景気と物価高が影響しているのかもしれない。注目すべきはもうひとつのトップ3「発見しづらい」だ。一般にはあまり知られていない中小企業には、見つけにくいという弱点がある。つまり、中小企業に就職したかったのに諦めた人が少なからずいることが示唆されている。

中小企業が留学生を呼び込むための施策として、今回調査に参加した46人からは、待遇面の向上のほかにも、情報提供の機会を増やしてほしいという要望が聞かれた。社内の外国人社員の声、文化の違いを尊重して働ける環境か、ビザや日本語教育などのサポート体制はどうかといった企業の魅力を「留学生目線で発信すること」が大事だとの提案も聞かれた。
応募理由の「インターンシップ参加者の優遇」が今年度に大きく伸びていることも注目したい。工夫次第で就職を希望する留学生に出会える機会が大いに増えることが期待できる。
なお、この調査の回答者の属性は、東アジア33人、東南アジア8人、南アジア2人、欧米3人の計46人。そのうち文系は22人、理系は24人。また所属別では、大学院博士課程1人、修士課程22人、学部生21人、高等専門学校生2人となっている。



