米サンフランシスコ発の人工知能(AI)データラベリング企業Mercor(メルコア)は、評価額100億ドル(約1.5兆円。1ドル=154円換算)で3億5000万ドル(約539億円)を調達し、全員22歳の共同創業者3人は自力で資産を築いたビリオネアと報じられる存在になった。
調達の前後には、メタの短編動画プラットフォーム『Reels』のコンテンツを基にしたAIトレーニング案件を運営し、データラベリングを担う業務委託スタッフ数千人が日々コンテンツにタグ付けを行っていたとされる。しかしMercorは資金調達から間もなくこの案件を突然打ち切り、時給を引き下げた新プロジェクトへの参加を持ちかけたという。本稿では、若いビリオネアの成功が不安定な条件で働く業務委託スタッフに支えられている構図を浮かび上がらせる。
史上最年少ビリオネア誕生の直後、数千人規模のプロジェクトが終了
Mercorは10月27日、3億5000万ドル(約539億円)を調達したと発表した。これを受け、共同創業者3人は「史上最年少の自力で富を築いたテック系ビリオネア」となった。
だが、彼らはそのわずか1週間後に、数千人規模の業務委託スタッフを抱えるAIプロジェクトを終了した模様だ。その数時間後にMercorは、「時給を下げて再雇用する」と彼らに持ちかけたと複数の関係者が述べている。
突然の中止、スタッフはSlackから締め出し
同社の元業務委託スタッフは、11日に突如、担当していたAIトレーニングプロジェクトが中止になり、Slackから締め出されたと語っている。Mercorはその翌日、スタッフにEメールを送り、「Musen」というコードネームのプロジェクトの中止を伝えたという。
フォーブスが話を聞いた同社の業務委託スタッフ5人によれば、このプロジェクトは、メタのフェイスブックやインスタグラムの短編動画プラットフォーム『Reels』に投稿された動画や音声をレビューする作業に特化していた。スタッフが参加していた、作業の進捗を共有するSlack上のグループのメンバー数は、ある時点で5000人を超えていたという。
スタッフは、数カ月前からこの業務に関わり、10月時点で「少なくとも12月までは続く」とMercorのマネジャーから聞いていたと語った。Mercorは依頼元の企業を正式に明かしていないが、スタッフは、依頼元がメタであると説明され、メタのSNSアプリに投稿されたコンテンツのみを用いて、AIが短編動画の中の人物や商品を識別できるように訓練するよう指示されていた。
「本当に突然だった。これまでAI関連の仕事をいくつか経験してきたが、こんな事は初めてだ」と、あるMercorの業務委託スタッフはフォーブスに語った。取材に応じたスタッフはいずれも匿名を希望した。



