暗号資産

2025.11.16 15:30

著名女性ラッパー「イギー・アゼリア」、暗号資産の独自トークンを展開

ラッパーのイギー・アゼリア(Photo by Ethan Miller/Getty Images)

ラッパーのイギー・アゼリア(Photo by Ethan Miller/Getty Images)

編注:本稿は情報提供のみを目的とするものであり、特定の暗号資産やサービスの利用を推奨するものではありません。日本の場合、暗号資産の独自トークンを業として取引する行為は、日本の金融庁・財務局に登録した暗号資産交換業者が行えます。登録がない暗号資産交換業者において、暗号資産を取引することは推奨しません。暗号資産を取引する際は、金融庁が公開している「暗号資産交換業者登録一覧」をご確認ください。海外セレブが自分の独自トークンを日本居住者に対して業として販売・仲介を行った場合、海外セレブ側は資金決済法、金融商品取引法に抵触するおそれがあります。

またオンライン上で行われる賭博は犯罪です。海外で合法的に運営されているオンラインカジノでも、日本居住者がアクセスして賭博を行えば賭博罪などに問われます。海外セレブなどオンラインカジノ運営者は日本の刑法に問われ、刑事責任を負う可能性があります。

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情報開示:筆者はThrustプロジェクトに一切関与しておらず、MOTHERのトークンを保有していない

「セレブ・クリプト」は投機的バブル、価格操作、詐欺まがいの手口で崩壊

かつてセレブリティによる暗号資産トークンは、ファンとの新しい交流手段かつデジタル時代の名声を象徴するツールとしてもてはやされた。2024年ごろから次々と発行されたこのようなトークンは、ファンが単に支持を表明するだけでなく、憧れのスターの経済的成功を共有できると宣伝された。

しかし、その大半は投機的バブルや価格操作、詐欺まがいの手口によって崩壊した。熱狂は消え、評判は傷つき、「セレブ・クリプト」は一気に人気を失った。

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著名女性ラッパー「イギー・アゼリア」と独自トークン

そんな中、欧米でこの分野の流れを変えようとしているのが、世界的に知られるオーストラリア出身のラッパーのイギー・アゼリアだ。彼女は2024年、他人が自分の名前で「IGGY」トークンを作り利益を得ようとしていたことを知り、Solana(ソラナ)のブロックチェーン上で「MOTHER」と呼ばれるセレブリティ・トークンを立ち上げた。彼女のファンは「マザーランド」と呼ばれるデジタルのゲーム・カジノプラットフォーム上で、このトークンを使ってブラックジャック、ポーカー、スポーツベッティングを利用できる。

投資総額が2500万ドル(約39億円。1ドル=154円換算)を超えるMOTHERは、単なる投機ではなく、ゲームとエンタメで実際に使えるトークンを目指した点で、従来の“パンプ・アンド・ダンプ”(価格つり上げ後の売り抜け)型セレブコインとは異なると筆者は考えている。

「私のほかに、セレブトークンが本当にどんな可能性を持っていて、どうやって価値を生み出せるのかを示した人はほとんどいないと思う」とアゼリアは、以前の筆者のインタビューで語っていた。「もっと多くの人を引きつけるためには、ポップカルチャーやエンタメをクリプトの世界に取り込むことが欠かせない。それを実現できるプロジェクトは、今のところ私を含めてほんの1、2件くらいだと思う」。

彼女のこの発言は、フロリダ州フォートローダーデールで開かれたブロックチェーン・フューチャリスト・カンファレンスの直前のものだ。彼女は、「セレブコインの死」と題したパネルに登壇した。

アゼリアのセレブトークン市場への参入は、現状への批判であると同時に、その再発明ともいえる。彼女が現在アドバイザーを務めるThrust(スラスト)と呼ばれるプロジェクトは、セレブリティのトークンを扱うプラットフォームだが、ファンが単に応援するだけでなく、暗号資産を通じて経済的な利益を得られる可能性を提供する点が核となっている。

アーティストに大きな価値をもたらす一方、ファンが得られるのは体験だけ

「アーティストのファンは、アーティストに大きな価値をもたらし支えている一方で、その見返りとして得られるのは“体験”だけだ。金銭的な報酬はまったく得られない」と、アゼリアは率直に語る。「なかには人生すべてをファン活動に捧げている人もいる。『この人は、最後の1ドルまで使って私のコンサートに来ているんだ』と思うと正直、少し怖くなることもある。そんな人たちに私が与えられるのは、エモーショナルな経験や記憶だけなんだから」。

こうした“感情のやり取り”こそが、セレブリティ・トークンの需要を支えてきた。しかし、そこには、その価値を持続させるための経済的裏付けが存在しなかった。「これまでのセレブトークンは、そうしたカルチャーや“コミュニティの一員でありたい”という感情的価値に基づいて取引されてきた部分がある。でも実際のところは、投機や流動性を求める動きや、セレブ本人の人気に支えられてきた」とアゼリアは語る。

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翻訳=上田裕資

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