気になるのは反対の理由だ。意外なことに、AI故人に違和感がない若い年代に「故人の意思を確認できないため不適切」との意見が多かった。そう考える60代はもっとも少ない。AIの本質をよく理解している世代ならではの疑問だろう。

AI故人はあくまでそれらしい作り物であり、あの世から本人の魂を呼び出すわけではないから、故人にとっては、自分の知らないところで自分の偽物が勝手なことを家族に話していると思うと、複雑な気分だろう。
また男性では、故人の尊厳を損なう、倫理的に問題があると感じる人が多く、女性では違和感が拭えない、精神的に受け入れがたいという意見が多い。違和感を覚える人は、年代が上がるにつれて増え、60代では50パーセントを超える。

倫理的な問題は、生前の本人の同意があればある程度は解消されるだろう。そこで、自分自身がAI化されることをどう思うかを問うと、AI故人サービスには賛成する人が全体では約30パーセントだったのに対して、自分がAI化されることを望む人は約15.4パーセントと少なかった。もっとも積極的だった20代男性も、自分の場合になると割合がわずかに減る。60代は60パーセント以上が反対に回った。
まだ生まれたばかりのサービスなので、知識も乏しく適切な判断は難しいだろうが、現時点では考えが混乱している状態だ。自由意見でも、有名人を利用するのは侮辱に思えるので家族など身近な人のみにしてほしいと言う人がいれば、内面までは再現できないので有名人を商業的に使用する場合のみ許容したいという人もいる。20代と60代では死生観が大きく異なるだろうから、いろいろな意見があって当然だ。若い人たちも年齢を重ねるにつれて考えが変化していくはずだ。またテクノロジーも進化していく。
もし仏壇に置いたタブレットが夜中に勝手に起動して、死んだじいちゃんがいきなり誰も聞いたことがない秘密をしゃべり始めたりしたら、わかっていても腰を抜かしそうだ。そんな愉快な「事故」の可能性も含め、これからどう展開していくか、楽しみに見守りたい。


