5. ガサダルー(フェロー諸島)
ガサダルーは、ヴォーアル島の断崖の上に、忘れられた伝説の地のように存在している(ヴォーアル島は、ノルウェーとアイスランドのあいだに位置するフェロー諸島の一つだ)。
氷河の侵食によってできたU字型の氷食谷に、屋根に芝生を敷いた家々が点在する。背後にそびえるシルエットは、ヴォーアル島の最高峰であり、「鷲の山」の異名をとるアルナフィヤル山(722m)だ。ムラフォッスル滝は、眼下の大西洋にごう音とともに流れ落ち、頭上にはフルマカモメが円を描いて舞う。
2004年に岩盤を貫くトンネルが開通するまで、長く孤立していた集落には、いまでは蛇行する単線道路が通る。地元住民は、玄関口でエチオピア産のイルガチェフェ・コーヒーをすすりながら、フィヨルドを超えていくやわらかな雲を眺めたり、寂しく立つ赤い郵便受けに向かってとぼとぼ歩いたりして過ごしている。
6. イア(ギリシャ、サントリーニ島)
サントリーニ島の北端に位置するイアでは、鏡のようなインフィニティ・プールや、ブーゲンビリアが枝垂れるバルコニー、そして白漆喰塗り崖沿いの家々が、まるでカルデラに刻まれた角砂糖のようにエーゲ海へとこぼれ落ちるように広がっている。
日中は、ボヘミアンなアートギャラリーや瀟洒なブティックに並ぶ、素朴な陶磁器や、たなびくカフタン(ガウンのような民族衣装)が目を惹く。毛むくじゃらのロバが、ひづめの音をたてながら石畳を歩き、教会の鐘がカルデラに響き渡る。
日没時には、人々が夕日を追ってヴェネツィア時代の城址に集まり、カメラを構える目の前で、空が橙色と薔薇色に燃え上がる。月光とランタンに照らされたタヴェルナ(居酒屋)で、新鮮なタコやカラマリ(イカのフライ)に舌鼓を打ちつつ、眼下のアモウディ湾に打ち寄せる波音に耳を澄まそう。猫たちは温かな岩棚に寝そべり、恋人たちはよく冷えたアシルティコ・ワインを手に語らう。
7. バウルタンゲ(オランダ)
バウルタンゲは、オランダ北部の田園地帯にある、16世紀末に建設された要塞(防御都市)であり、その中に村が存在する。星型をしたこの要塞は、フローニンゲンの湿地に刺繍されたように存在しており、きれいな対称性とおとぎ話のような魅力に満ちている。
レンガの城壁と草に覆われた稜堡(りょうほ)が、要塞の中心から放射状に広がっている。チューリップが咲き乱れる中庭を囲むように、17世紀の大砲が鎮座する一方で、居心地のいいカフェからは、焼き立てのストロープワッフル(丸型のワッフル生地の間にキャラメルシロップを挟んだ伝統菓子)の香りが漂う。
石畳の広場には、マーケットの露店がずらりと並び、手づくり食器やリネンの地図、スパイスチーズが売られている。要塞博物館では、復元された兵舎やマスケット銃決闘場を見学しつつ、包囲の際の逸話や戦略について学ぼう。大砲発射のデモンストレーションでは、砲声が堀に響きわたる。


