国内市場が縮小し続けるなか、日本のスタートアップが大きく成長し、ユニコーン(企業価値10億ドルの未上場企業)になっていくための戦略の一つが、グローバル市場への挑戦だ。しかし、海外で売り上げやユーザーを拡大し、現地市場でたしかな地位を築いている会社は数少ない。
成長産業支援を手がけるフォースタートアップス代表取締役社長の志水雄一郎は、常々「日本のスタートアップを世界へ」と訴えてきた。世界で勝てる企業を生み出すには何が必要なのか。志水に話を聞いた。
新産業こそが成長のエンジンになる
──日本のスタートアップが世界に出ていくべき理由は何でしょうか。
私は日本の新産業の挑戦者を支援する立場として、日本の現状に強い危機感を抱いています。日本経済は今、世界から取り残されつつあります。かつてソニーやトヨタが海外企業と対等に戦っていた時代から状況は一変しました。GAFAMのように世界で勝つ新産業が日本からは生まれていません。その結果、経済の成長エンジンが失われ、賃金の上昇は停滞しています。日本人の生活水準はOECD(経済協力開発機構)の平均を下回り、ヨーロッパの中進国と同じ水準にまで落ち込みました。
一方、アメリカでは新産業と既存産業が人材を奪い合う「ウォー・フォー・タレント」の時代に突入しています。競争力を持ち、高い報酬を支払える新産業が国全体の生活水準を押し上げているのです。
日本が再び成長軌道に戻るためには、国内市場のなかだけで競うのではなく、グローバル市場で戦える新産業を生み出すことが不可欠です。世界の競争のなかで鍛えられた企業こそが、国の生産性を高め、賃金を押し上げ、ひいては国力を高める力になります。だからこそ私は「日本のスタートアップを世界へ」と強く訴えているのです。
SpaceXはNASAの支援で飛躍した
──そうした新産業を生み出すためには何が必要でしょうか。
「誰を勝たせるのかを決め、誰を負けさせるのかを決める」という、戦略的な判断を産官学で議論することです。イーロン・マスクが創業したSpaceXだって、NASAが初期を支えたことで、その後大きく成長しました。人やお金には限りがありますから、誰かに集中的に投資をしないと、誰も圧倒的な勝者にはなれません。GAFAMのように圧倒的に勝つチームが、他のイノベーション人材やスタートアップを吸収して大きくなる。これが新産業創出の法則です。
かつての日本が繊維産業から自動車産業に集中し、世界でのプレゼンスを高めていったように、「この国は何で潤うのか」を決めることが、リーダーの重要な役割です。だからこそ、スタートアップという新産業育成を明確に最重要テーマと位置づけ、国が「これを必ずやる」と覚悟を持って表明する必要があると考えています。



