Wowシグナルの発生源として、地上の電波、航空機、人工衛星、天文現象など、さまざまな原因が検証されたが、その仮説はすべて否定されている。受信された周波数帯(1420MHz)はITU(国際電気通信連合)によって使用が禁止されており、違法に使用されたとしてもわずか10kHz幅でこれほどシャープなピークは再現できない。
また、高速で自転する中性子星が発するパルサーの場合は、連続放射されるため72秒間で止むことはない。「彗星通過説」も議論されたが、信号が強すぎること、彗星の移動にともなうドップラー効果による周波数帯のシフトが見られないこと、類似の観測例がないことから、これも否定されている。つまりWowシグナルは、意思を持つ誰かが、自然界では発生し得ない強力な電波を、遠い宇宙の果てから人類に向けて放射したと考えるのがもっとも合理的な解答として残る。
こうした出来事を経て、1984年には天文学者ジル・ターター博士などによって「SETI研究所」が設立された。また、天文学者でありSF作家としても知られるカール・セーガン氏もSETI研究を推進するひとりだったが、彼の死後となる2008年にはSETI研究所の内部組織として「カール・セーガン・センター」が設立された。同組織の研究は、SETI(地球外生命探査)、天体物理学、太陽系外惑星、惑星探査、地球科学、宇宙生物学など6分野にわたり、NASA(米航空宇宙局)の助成金や民間からの寄付を得ながら100名以上の研究者が活動している。
カール・セーガン氏はボイジャー探査機が搭載した「ゴールデンレコード」を監修する委員長を務め、ビッグバンから現在までを1年間で表した「宇宙カレンダー」を発案し、テレビ番組『コスモス』の共同執筆者兼ナレーションを務めた人物であり、ジョディ・フォスター主演の映画「コンタクト」(1997年公開)の原作者としても知られている。
主なターゲットは「系外惑星」
SETI研究所が所有するアレン望遠鏡アレイの建設(ATA)は、サンフランシスコの北方約480kmの「ハットクリーク電波天文台」内にある。この建設プロジェクトはマイクロソフトの共同創設者の2人、ポール・アレン氏とネイサン・ミアボルド氏の1250万ドル(約18億7500万円、1ドル150円換算)の寄付によって実現し、2007年に運用が開始された。アレン氏は世界初の民間有人宇宙船「スペースシップワン」(2004年初飛行)や、世界最大の翼幅を持つ「ストラトローンチシステム」(2019年初飛行)への投資でも知られる人物であり、彼はこのATAプロジェクトに総額3000万ドル(約45億円)以上を寄付している。


