暫定トップのラッセル・ボートが進める、CFPBの機能停止
しかし、トランプ政権によってこうした活動のほとんどが停止状態に追い込まれている。今年、CFPBが実施する法執行措置の件数は、設立以来で最も少なくなる見通しだ。行政管理予算局(OMB)長官であり、CFPBの暫定トップを務めるラッセル・ボートは最近、「今後2〜3カ月以内にCFPBを完全に閉鎖する計画だ」と発言した。
前例のない義務の放棄と元幹部が警鐘
「CFPBの短い歴史の中で、ここまで法律上の義務をほぼ完全に放棄した例は前例がない」。そう語るのは、今年2月に退任した元CFPB執行局長のエリック・ハルペリンだ。OMBは、フォーブスのインタビューおよびコメント要請に応じなかった。
ボートの一連の動きは、連邦政府の規模を大幅に縮小するという、より大きな構想の一部とみられている。彼はCFPBを、他の監督機関と重複し、かつ企業に敵対的な存在だと見なしているようだ。バイデン政権下でCFPB長官を務めたロヒト・チョプラも、業界関係者からしばしば批判を受け、「法的権限を超えた措置を取っている」と指摘されていた。
しかし、フォーブスが取材した元規制当局者や金融サービス業界の幹部はそろって、「CFPBを廃止すれば、得られる利益よりも被害のほうがはるかに大きい」と口を揃えている。
規制緩和で恩恵を受ける、巨大銀行や信用情報機関
規制の後退によって恩恵を受けている企業は数多い。その中には、JPモルガン・チェース、バンク・オブ・アメリカ、ウェルズ・ファーゴといった巨大銀行のほか、送金アプリ「Zelle(ゼル)」を共同所有・運営するアーリー・ウォーニング・サービスが含まれる。これら企業は、Zelle上で発生した数億ドル(数百億円)規模の詐欺を十分に防げなかったとして起こされていた大規模訴訟の被告となっていたが、訴えは却下された。昨年12月、Zelle側はこの訴訟を「根拠のないもの」と主張していた。
また、主要な信用情報機関3社──エクイファックス、エクスペリアン、トランスユニオン──も監督の緩和の恩恵を受けている。これら企業はかつて、消費者の信用情報や入居審査報告書の誤りを放置したとしてCFPBから制裁を受けていたが、現在はその監視の目が大きく弱まっている。他の連邦規制当局の監督下にないノンバンクやフィンテック企業も、大手や中小を問わず、今後は法令順守への圧力が弱まると見られている。
緩むコンプライアンス投資、規制当局を恐れない企業
金融機関側は、監督の目が行き届かなくなったことをすでに理解しているようだ。フィンテックや金融機関に助言を行うある規制コンサルタントによれば、今年は多くの企業が昨年よりもコンプライアンス投資を減らし、最低限の要件を形式的に満たすだけの対応にとどめる傾向が強まっているという。
「今や、規制当局の目を気にする企業はいない」と語るのは、不正防止とコンプライアンス対応を手がけるAlloy(アロイ)の共同創業者兼CEO、トミー・ニコラスだ。彼によれば、金融機関は依然としてコンプライアンスへの投資を続けているものの、そのペースは「以前よりも明らかに緩やかになっている」という。
こうした規制緩和は、消費者の生活が逼迫する中で進行している。インフレが中低所得層を直撃する中で、クレジットカードや自動車ローンの延滞率はここ2年で2011年以来の水準まで上昇し、依然として高止まりしている。搾取的な商法は往々にして最も弱い立場の消費者を狙う傾向があり、各州の司法長官が規制の空白を埋めようと動いてはいるものの、米国の消費者はこれまで以上に金融商品の細則を注意深く確認する必要がある。


