教育

2025.11.24 17:00

天才児には天才向け教育を──世界が挑む才能発掘の最前線

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──なぜ学校教育の枠外で若い才能を探す取り組みが増えているのでしょうか?

近年の新世代型人材発掘プログラムといえば、ライズ・フォー・ザ・ワールド(Rise for the World)やティール・フェローシップ(Thiel Fellowship)、アトラス・フェローシップザ・ナレッジ・ソサエティ(The Knowledge Society)、そして私が所属するアントレプレナー・ファーストなどがありますが、これらはいずれも企業や慈善団体によって立ち上げられたものです。

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ただし優れた人材を見いだす「タレントサーチ」そのものは、新しい概念ではありません。たとえば西暦650年から1905年まで続いた中国の科挙制度は、高官を選抜するための元祖タレントサーチと言えるでしょう。

1900年代にも2つの主要な学術的タレントサーチがありましたが、そのうち新しい方がSMPY(数学の才能を早期に示した児童の研究、The Study of Mathematically Precocious Youth の略語)です。どちらも大学教授が始めたもので、ノースウェスタン大学やジョンズ・ホプキンス大学のタレントサーチプログラムは、このSMPYモデルを基に作られています。

新世代型タレントサーチの多くは、大学の外で行われ、より特定の分野に特化し、さらに、若い世代から人材を選抜する傾向があります。

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その背景には、特定分野の突出した才能を育てる場として、大学がもはや最適な環境ではなくなっているという現実があるからかもしれません。従来の学校教育に代わる選択肢は急速に増えており、新しい取り組みが優れた成果をあげるにつれ、才能ある学生にとって、より魅力的な選択肢となりつつあります。その一例が、投資家であり起業家でもあるピーター・ティールが設立したティール・フェローシップ(Thiel Fellowship)です。ティールは、才能と高い志を持つ若者にとって大学が本当に有益なのか、懐疑的な見方をしていました。同様に、経済学者のブライアン・カプランは著書「大学なんか行っても意味はない?──教育反対の経済学(The Case Against Education)」のなかで、今世紀における大学の主な役目は、「才能のアピールと認定」ぐらいだと断じています。

一方、現在ヴァンダービルト大学のデイビッド・ルビンスキーとカミラ・ベンボウが主導するSMPYでは、将来さまざまな分野で活躍する逸材を、12〜13歳という早い段階で特定します。こうした研究は民間企業や、子どもの才能育成を通じて社会貢献を目指す慈善団体からの関心も集めています。なぜなら多くの組織が、知的・技術的な進歩には優れた頭脳が不可欠であることを理解しているからです。エリート人材は他のどの人的資源よりも希少なため、近年では獲得競争が激化しており、発掘のための新たな仕組みやアプローチが次々と生まれています。

──所属しているアントレプレナー・ファーストでの活動を通して、「起業家の素質」に関する学びはありましたか?

2001年、デイビッド・ブルックスはエッセイ「オーガニゼーション・キッド(The Organization Kid)」のなかで、次のように記しています。「大学生らは、成功するためには『正しい課外活動への参加』や『良い成績』といった数多くの項目をクリアしなければならないと、すっかり信じ込まされている」と。大学に入ってからも、卒業してからも、多くの学生は同じように行動し続けます。高いGPA(成績評価)をとり、クラブ活動の代表を務め、望ましいインターンシップに参加する──多くの大学生は、これらの項目そのものに価値があるからではなく、ただ「こなしておけば将来の選択肢が広がるはずだ」と信じているのです。

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翻訳=猪股るー

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