フランス、ドイツ、英国という20世紀初頭の工業・知的大国は現在、経済を勢いづけるのに四苦八苦している。背景にはこれらの民主制国家を覆う不穏な政治情勢があり、国民連合(RN)、ドイツのための選択肢(AfD)、リフォームUK(英国改革党)という概して新しい右派政党が伸長している。これら3カ国に共通するのは、政治と政策に一貫性を欠いていることだ。
中国にはこうした問題はない。中国はますます独裁的な体制になってきているとはいえ、「全体会議」という政策決定メカニズムがあり、これまで有効に機能してきた。中国共産党中央委員会の全体会議(全会)は5年単位の政策決定サイクルで7回程度開かれ、国の長期的な発展方針などを定める。英国の労働党大会や保守党大会のような派手な政治ショーと違い、全体会議は非公開の真面目な討議の場だ。
西側諸国で相変わらず政治の混迷が続くなか、中国共産党は10月後半に第20期中央委員会第4回全体会議(4中全会)を開いた。西側メディアの報道は比較的薄かった。会議には中央委員と中央委員候補計315人が出席し、次の5年間の広範な経済政策目標などについて議論した。まとめられた案は来年の全国人民代表大会(全人代)で採択され、その際に詳細も公表される見込みだ。
今回の全体会議の背景のひとつに、中国指導部が望むほど好調でない中国経済の状況がある。具体的に言えば、第3四半期(7〜9月)の実質国内総生産(GDP)成長率は前年同期比4.8%と、政府目標の5%にとどかなかった。9月の住宅価格も下落し、下げ幅は過去1年近くで最大だった。小売売上高の伸びも鈍化しているほか、不動産投資も落ち込んでいる。こうしたなかで、全体会議では内需拡大の方針があらためて確認された。
4中全会で打ち出された主要な目標のひとつは「科学技術の自立自強を著しく向上させる」というものだ。これは、戦略的かつ自律的に技術エコシステムを発展させようとしている米国や欧州などの取り組みと相似になっている。



