Evernote買収で示す、独自の「再生」戦略
Bending Spoonsが初めて手がけた大型案件は、生産性ノートアプリEvernote(エバーノート)の買収で、その後は事業領域を広げている。「われわれの戦略は明確かつ精緻だが、特定の分野に偏るものではない」とフェラーリは述べている。
Bending Spoonsは借入を活用した買収を進めており、安定した収益を確保しながらも成長が停滞したアプリ・製品・ウェブサイトを次々と買い取っている。エバーノートのような案件では、スタッフの削減や価格の引き上げなど、プライベート・エクイティの手法に近い運営を行ったように見える。一方で、Meetup(ミートアップ)のような買収先には大規模な投資を行い、機能の刷新や事業拡大を進めていると説明している。
2021年まではほぼ自己資金で運営していたBending Spoonsのビジネスモデルは、バイアウトファンドや時価総額が522億ドル(約8兆円)のカナダのソフトウェア統合企業Constellation(コンステレーション)に似ているとされてきた。しかし、同社の初期投資家の英資産運用会社ベイリー・ギフォードのピーター・シングルハーストは、「どちらの分類も当てはまらない」と指摘する。シングルハーストはフォーブスに対し、「Bending Spoonsはデジタルアプリを所有し運営しており、組織内の優秀な人材を活用して、非常に高い利益率で成長させることに長けている」と語った。
イタリアで最も価値の高い非上場企業の1つに
今回の資金調達により、Bending Spoonsはイタリアで最も価値の高い非上場企業の1つとなった。もし同社が現状の評価額でミラノ証券取引所に上場すれば、時価総額上位40社で構成されるFTSE MIB指数の構成銘柄入りを果たすとみられている。同社はまた、イタリアのごく小さな新興企業のエコシステムから生まれた史上最大のスタートアップでもある。
イタリアでユニコーン企業となったスタートアップはわずか数社にすぎない。決済サービスのSatispay(サティスペイ)、後払いサービ(BNPL)スのScalapay(スカラペイ)、そして2024年7月に欧州の保険大手アクサが10億ドル(約1530億円)で買収した保険会社Prima(プリマ)などがその例だ。
Bending Spoonsが2014年に買収したカスタマイズアプリは、すでにApp Storeから姿を消している。しかし、フェラーリは創業10年を経た今も「事業の本質は当時と変わらない」と語る。「私たちは当時と同じ取り組みを、より洗練されたやり方で、はるかに大きな規模で行っているだけだ」と彼は述べている。


