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2025.11.10 10:00

印刷からデジタル、AIの時代 「進化するPDF」は今後も働き方を変える力をもつ

アドビの定番アプリケーション、Adobe Acrobatを担当する立川太郎氏

Acrobat Studioがもたらす新ワークフローは仕事のあり方も変化させる

Acrobat Studioの中核をなす機能が「PDF Spaces」だ。これはドキュメント、メモのファイルやウェブリンクを1つのワークスペースに集めて、横断的に情報を整理・活用する用向きに適した機能だ。これまでのAIアシスタントが単一(もしくは少数)のPDFを対象としていたのに対し、PDF Spacesではプロジェクトにまとめた複数の関連資料の中から、AIが自動的に概要や重要なインサイトを抽出してくれる。

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北米から先行導入された高機能な最上位プランの「Acrobat Studio」
北米から先行導入された高機能な最上位プランの「Acrobat Studio」

「例えば、人事関連のさまざまな規定書類をPDF Spacesにアップロードしておけば、ユーザーは『休暇の申請方法は?』といった質問をAcrobat AIアシスタントに投げるだけで、関連する複数の書類から最適な回答を生成します。企業の人事担当者の問い合わせ対応業務など、負担を大幅に軽減できる可能性があります」(立川氏) 

対応ファイルはPDFに限らず、WordやExcel、PowerPointといった定番のOfficeファイルも扱える。さらに、Google DriveやMicrosoft OneDriveといったクラウドストレージと連携し、保存されているファイルを直接参照することも可能だ。社員が共有できるナレッジベースが比較的簡単に作成できることから、ドキュメントを扱う頻度が高い営業部のスタッフ、専門的な作業に従事するエンジニア、その他マーケティングや商品企画担当者の情報共有にも役立てられそうだ。

Acrobat Studioのもう一つの大きな特徴は、アドビの簡易デザインツール「Adobe Express」のプレミアム機能が統合されている点だ。

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PDF Spacesで得たインサイトから、プレゼンテーション資料や報告書、SNS投稿用の画像などを、プロフェッショナルなテンプレートを使って迅速に作成できる。立川氏は情報の取得、コンテンツ作成までのタスクをシームレスに一貫してできるワークスペースにしたいと語る。

「PDFは情報のコンテナ」、欲しい情報や動画、音声をPDFから引き出す未来

立川氏は「PDFは情報のコンテナである」というキーワードを、このインタビューの間にも繰り返し強調した。そのコンテナは今後、テキストや画像だけでなく、動画や音声など、ユーザーが必要とする最適な形でアウトプットもできる包括的なプラットフォームになる可能性があると、立川氏は展望を語る。

「アウトップットの仕方はさまざまだと思います。例えばPDFという情報のコンテナから、ある時はテキストで、ある時は音声で、またある時は要約されたカード形式でといった具合に、ユーザーが必要なフォーマットでPDFから引き出せる。このような柔軟で懐の深いプラットフォームにPDFが成り得ると考えています」(立川氏) 

印刷品質を統一するという課題を背負って生まれたPDFは、その後30年以上の時を経た今は、生成AIのテクノロジーを推進力として得たことで、また大きな変貌を遂げようとしている。米国から先行導入されたAcrobat Studioの日本上陸も今から楽しみだ。

連載:デジタル・トレンド・ハンズオン
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編集=安井克至

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