大谷の「異常とも言える成長曲線」の奥にあるもの……
筆者は今年6月、都内でスポーツビジネスカンファレンスの開催に関わらせていただいた。
横浜ベイスターズのオーナーであるDeNAの南場社長にご講演いただいた中で印象に残っている言葉がある。「日本の選手がメジャーに取られてしまうのが悔しい」。
日本のプロ野球界でせっかく育てた選手にメジャーと同じ金額のオファーができない、つまり日本のプロ野球のビジネスレベルがメジャーリーグと比較して著しく低いという、いかにも経営者的視点の理由である。
激しく同意するのであるが、筆者が日本人のスポーツビジネスパーソン(勝手にそう呼んでいる)の1人として最も悔しいことは、日本の宝をアメリカに取られたことでも、それにまつわるお金の話でもない。大谷選手がアメリカに来てからの異常とも言える成長曲線とそれを創り上げたアメリカのスポーツにおける選手の育成システムが日本には存在しないことである。
「アスリート界でのグローバリゼーション」によって、選手の成長戦略やフロントのアプローチも変化しつつあるが、日本ではまだその影や形がやっと見えてきた程度であろう。
年上が偉かったり、お米が主食だったり(身体を大きくすることに非効率な食品の意)、若いアスリートの成長には障壁となる事が多い我が国では、アメリカ的な選手の育成とその能力のメンテナンスは、容易なことではない。
日本のスポーツ界がそんな日を1日でも早く迎えるには、競技は問わず、第2・第3の大谷翔平を生み出すのが最も近道ではないかと、彼のワールドシリーズでの活躍を目の当たりにしながら、筆者は思うのである。

最後となるが「スポーツだけやっていればいい!」が一番の問題である日本のスポーツ界、通訳不要のメジャーリーガーはいつ誕生するのだろうか?「無理だろうなぁー」とは思いつつも、期待をしながらドジャースの連覇に祝杯を上げようと思う。


