働き方

2025.11.04 17:15

大谷翔平の強さ爆発させた「S&C」、スタンフォード大日本人コーチが見たある差異

Getty Images

大谷を強くしたのは「S&C」だった?

 「Strength and Conditioning Coach」(ストレングス & コンディショニング コーチ、以下 S&C)は、アメリカのスポーツ界では立派な職業のうちの一つであるが、日本では馴染みのそれではないであろう。

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簡単に説明するなら、競技の向上のベースとなるウェイトトレーニングを専門に担当するコーチである。野球を例にとって説明する。バッティングや走塁、投球術、試合運びや選手起用等はチームの監督やコーチ達が担当する、そしてそれらの技術面のベースになるとも言える筋力や瞬発力等を鍛え上げていくのがS&Cコーチの役割である。アメリカのハイスクールそしてカレッジでは、高い確率で彼らの存在が確認されるであろう。競技レベルが高ければ高いほど、この分業制での選手の成長やシーズン中のコンディションのメンテナンスがスタンダードなオペレーションになっている。

知り合いのメジャーリーグのコーチングスタッフにヒアリングしたところ、メジャーリーグでも多分に漏れず、S&Cコーチ陣の存在はなくてはならないものであるそうだ。

その友人の所属するチームでは、シーズン中は野手は3日に一度S&Cコーチ指導の下の組織的なウエイトトレーニングが義務付けられているそうだ。

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ベテラン大物選手や投手は別メニューであるそうだが、オフシーズンもシーズン中も、ここアメリカのトップレベルのスポーツでは、トレーニングがコンディショニング維持やパフォーマンス向上の大事なファクターとなることは紛れもない事実である。

我々スタンフォード大学のアメフト部も同様に、オフシーズンは身体を大きくする重めのウェイトトレーニング、シーズン中はコンディションを整えるためのウェイトトレーニングを定期的に行う。選手と過ごす時間が多い彼らの存在は、オフィスは違えどチームビルディングに欠かせない存在なのである。

さて、ここで大谷選手のメジャーに行ってからの、年度別のホームラン数を見てみよう。

2018年 – 22本

2019 年– 18本

2020年 – 7本

2021年– 46本

2022年 – 34本

2023年 – 44本

2024年 – 54本

2025年 – 55本

彼はアメリカに来てから大きく成長している事が見て取れる。個人的な意見であるが、そのホームランの数のベースとなるであろうパワーや身体のキレを司るコアの強さは、S&Cコーチを中心とするアメリカの組織立ったウエイトトレーニングの仕組みとそれを元にした彼の不断の努力やルーティーンから生まれたものなのであろう。

次ページ > 大谷の「異常とも言える成長曲線」の奥にあるもの……

文=河田剛 編集=石井節子

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