高山の湖から、東アジアのネオンまたたくスカイラインまで。UBSの調査をもとに、世界で最も豊かな国を紹介する。
ユタ州のとてつもない峡谷から、中国の霧に包まれた峰まで、2025年に見えてくる世界は、美しさだけでなく、経済力という点でも豊かだ。その眺望を示すにあたり、この記事では、世界的金融機関UBSの「グローバル・ウェルス・リポート2025」にしたがって、トータルでの家計純資産(total net household wealth)という点から、世界で最も豊かな国をランクづけした(単位は米ドル)。
経済協力開発機構(OECD)、国際通貨基金(IMF)、世界銀行のデータにも基づいている。だが、これは単なる数字のゲームではない。堂々たる大聖堂や、超高速列車、ブドウ園を縫って流れる川などに象徴される「富」にスポットライトをあてたガイドでもある。豊かさが芸術と出会う場所では、伝統と変革が融合している。この記事はいわば、地球有数の豊かな場所へのパスポートだ。
1. 米国
総資産:163兆1170億ドル(約2京5120兆円)
ユタ州の砂岩でできた大聖堂のような構造物や、北西部の太平洋沿岸に広がる霧に包まれた森林などを擁する米国は、世界で最も豊かな国だ(トータルでの家計純資産にもとづく)。ニューヨークは熱狂的なエネルギーで脈打っている(鉄鋼、蒸気、ジャズがいっせいに衝突するさまを思い浮かべてほしい)。ニューオーリンズは、蒸し暑いリズムに揺れながらソウルミュージックに浸り、家々のバルコニーでブラスバンドが響き渡り、名物菓子のベニエ(揚げ菓子)で指は粉砂糖まみれになる。
ドラマを求めているのなら、西海岸を選ぶといい――ごつごつとした断崖や、太古の歩哨さながらにそびえる雄大なセコイアが待っている。イエローストーンやグランドキャニオン、ルート66沿いのレトロな食堂などの魅力も、米国の歴史ある物語の章をなしている。
2. 中国
総資産:91兆820億ドル(約1京4030兆円)
中国は、太古の王朝の物語をささやきかける。ゴビ砂漠では荘厳な沈黙が息づき、ラクダの隊商の足元では砂丘が波打つ。東部にある山岳景勝地、黄山の霧をまとった峰々は、繊細な水墨画を思い出させる。
一方、首都の北京では、深く根づいた伝統と、とどまるところを知らないスピードが肩を並べている。人力車。かつての王宮の数々を縫うように走る流線形の超高速列車。活気あふれる夜市の上できらめく高層ビル。
その一方で、南部の風景は、水田を見下ろすようにそびえるシュールなカルスト地形や、水牛と竹林が散らばるエメラルド色の段丘で、訪れる人の目を奪う。堂々たる長江のほとりには、時の試練を経た塔と、未来的なスカイラインが共存する。時を超越し、かつ絶えず進化し続ける文明が反映されているのだ。LEDに照らされたタワーのそばを、貨物船が滑るように通り過ぎ、太古の橋の下では漁師が網を投げ入れる。
3. 日本
総資産:21兆3320億ドル(約3286兆500億円)
日本では、春風に舞う桜の花のように、過去と未来が握手している。京都? 歴史ある寺院、絹の着物、祭壇から流れるお香のかおりを想像しよう。一方、首都東京は、ネオンまたたくエネルギーにあふれ、ラーメンの屋台や、高層ビルが立ち並ぶ一方で、そうしたビルの屋上にはのどかな庭園があったりする。
雪が積もったばかりの平野や広大な都市を切り裂くように流線形の新幹線が疾走し、北海道のラベンダー畑と、クマノミやウミガメに満ちた沖縄の光輝くサンゴ礁をつないでいる。その土地を、季節の抒情詩が彩る。春はピンク色に染まった桜、冬は険しい山々を静寂で包む粉雪。提灯に照らされた旅館の隣では、温泉の湯気が立ち上る。



