欧州

2025.11.01 10:00

欧州に「ネオコン・モーメント」は訪れるか 民主主義を守り抜く気概と積極的行動

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ジョージ・W・ブッシュが2001年、比較的平穏で繁栄した時代を謳歌したビル・クリントンに続いて米国大統領に就任した時、彼の周りには「ネオコン(新保守主義者)」と呼ばれる一群の顧問たちがいた。同年9月11日に発生した米同時多発攻撃を受けて、彼らの影響力は増大した。

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ネオコンという言葉は、米国右派の知的支柱のひとりだったアーヴィング・クリストルによって広められた。彼がネオコンを「現実という強盗に襲われたリベラル(liberals mugged by reality)」と定義したのは有名だ。

ネオコンの政策アプローチはとくに、イラク侵攻に代表されるように、積極的に軍事力を行使する外交政策と結びついていた。ネオコンはドナルド・トランプ大統領の登場を先取りしていた面もあるものの、現在は彼にイデオロギー的な共感をあまり抱いていないだろう。

ブリュッセルで先週開かれた欧州連合(EU)首脳会議で示唆されたように、ロシアに対してより強硬な政策への転換が求められているいま、欧州が「ネオコン・モーメント」を迎える頃合いになっている。欧州の中道派政府は、ロシア、中国、さらには米国による地政学的な「強奪(mugging)」に目を覚ましつつあるのだ。

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英国では、中国による国家機密の窃取がどれほど深刻なのかが明らかになりつつある(編集注:中国が英政府機関のシステムに侵入し、長年にわたり機密情報を入手していた疑いなどが報じられている)。ドイツの情報機関は、ロシアによる破壊工作や情報操作、国内機関への侵入について警告を発している。また、オランダの情報機関は自国の機密がクレムリンに渡らないように、米国との情報共有を制限する方針を示した。どれも由々しい事態だ。外部勢力による侵入行為の証拠はほかにも増えており、デンマークやスウェーデンなど欧州の複数の国が戦時への備えを本格化させている。

あるレベルでは、欧州諸国(英国を含む)による対応は目を見張るものがある。ドイツは財政赤字を抑制する「債務ブレーキ」を緩和し、今後最大1兆ユーロ(約178兆円)を防衛とインフラに支出する。英国は、ロシアの侵略に対するウクライナの防衛を一貫して支援してきた。また現在、欧州全体が防衛スタートアップ熱に沸いている。

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翻訳・編集=江戸伸禎

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