嘆かわしいことに、そして世界の劣化を示すものとして、欧州は、国際的に民主主義が栄えた長いグローバリゼーションの時代の果てに、世界に残されたリベラルデモクラシー(自由民主主義)の最後の砦になる可能性が十分ある。欧州のリベラルデモクラシーは中国やロシアからは「弱点」と見なされ、ほかの国から毛嫌いされることもあるが、教育、医療、開かれた市民社会といった欧州型モデルの重要な要素は、世界の大多数の人々から切望されているものだ。欧州はやがて、法の支配が尊重され、制度が安定している世界で唯一の広域圏になるかもしれない。
「現実という強盗に襲われた」欧州は、いずれ非民主主義国に対して、より断固とした姿勢で臨むようになるだろう。そうした行動は従来よりも大きなリスクを伴うことになるかもしれない。一方で、欧州は同時に、自らの社会経済モデルに対する自信を深めていくはずだ。
今回のEU首脳会議ではいくつかの地政学的問題(ロシアの凍結資産の活用など)が後回しにされ、ネオコン・モーメントには至らなかった。問題は、欧州が考え方を改めるには、現実からどれほどひどい「襲撃」を経験しなければならないのかという点だ。


