クリストファー・コロンブスが1492年、ニーニャ号、ピンタ号、サンタ・マリア号を率いて、約90人の乗組員とともにスペインから出航したとき、船には大量の物資が積み込まれていた。スペインという国が、新世界で足場を築くのに役立つと考えたありとあらゆる物資だ。
船員と兵士、数人の職人を含む乗組員は当時、新大陸にたどり着いて、スペインの国旗を設置し、前よりリッチになって帰って来ることだけを考えていた。
しかし、彼らが気付いていないことがあった。船倉にぎっしりと積み込んだのは、貨物や家畜、穀物、水、バラスト(船の安定性を保つために船底に積む砂利や石)だけではなかった。知らず知らずのうちに、人間ではない生き物も、数え切れないほど運び込んでいたのだ。
彼らは、自分たち人間以外の生き物も乗っていることは知っていたが、そのほとんどは、意図して積み込んだ馬や牛、豚だ。しかし、まったく意図せぬ生き物たちも乗っていた。微生物や寄生虫、げっ歯類、無脊椎動物、さらには昆虫が、船底の汚水や、ベッド用の敷き藁、バラスト用の土、食料袋のなかに潜んでいたのだ。
この出来事が新世界に及ぼした生物学的な影響は実に深刻で、その影響は今もまだ続いている。コロンブスの船に潜んでいた生き物が新大陸に上陸したことは、「世界的な侵入生物種の生態学」における重要な節目の1つとして考えられている。
以下では、新世界発見を目指した航海に加わっていた多数の招かざる生き物の中から、3つを紹介しよう。これらはのちに、とてつもなく大きな生態学的足跡を残すことになった。



