サイエンス

2025.10.31 18:00

約4万年前の古代微生物、アラスカの永久凍土から「蘇生」 研究

米アラスカ州フェアバンクス近郊にある米陸軍工兵隊の永久凍土トンネル(Credit: Tristan Caro)

米アラスカ州フェアバンクス近郊にある米陸軍工兵隊の永久凍土トンネル(Credit: Tristan Caro)

永久凍土の氷の中に長いもので約4万年にわたり閉じ込められていた古代の微生物を復活させることに成功したとする最新の研究結果を、米コロラド大学ボルダー校率いる地質学者と生物学者のチームが発表した。

advertisement

研究チームが今回の現地調査を行ったのは、米アラスカ州フォックスで米陸軍工兵隊が永久凍土に関連する工学的問題を調査する目的で維持管理している全長約110mの地下トンネルだ。永久凍土は有機物の破片、氷、岩石などからなる凍結した混合物で、北半球の陸地の約4分の1の下層に存在する。

研究チームはトンネルの壁から、数千~4万年前の永久凍土のサンプルを採取した。その後、サンプルに水を加え、4~12度の温度で培養した。この温度は、氷点下10度前後になる永久凍土の平均気温に比べてはるかに高い。

有機物の破片の中に保存されている微生物は、活動的になるのにしばらく時間を要する。最初、微生物集団の成長速度は非常に遅く、細胞が1日当たり約10万個に1個しか置き換わらないこともあった。だが、2~3カ月後には、まるで長い眠りから目覚めたかのように、繁栄したコロニーを形成し始めた。

advertisement

今回の研究をまとめた論文の筆頭執筆者で、コロラド大ボルダー校の地質学専攻大学院生だった地質生物学者のトリスタン・カロは「これは死んだサンプルでは決してない」と話す。

今回の発見は、北極圏および地球全体の健全性にとって幅広い意味合いを持っていると、論文共同執筆者のセバスチャン・コップフは続ける。微生物は活動的になるにつれて有機物を分解し始め、その過程で二酸化炭素(CO2)とメタンを放出する。CO2とメタンは温室効果ガスで、地球温暖化を加速する。

古代の生物が示す挙動は理想的な実験室条件下と野外で同じかどうかなど、未解決の問題はまだ多数あると、研究チームは付け加えている。

「極限環境のウイルスおよび微生物や、そこが実際にどのような状況かに関しては、まだほとんど解明されていない」と、今回の最新研究には参加していない氷河学者で、氷河の中に保存されている細菌に関する広範囲の論文を発表しているロニー・トンプソンは説明している。「細菌やウイルスが気候変動にどのように反応するか、このことに関する記録と理解は極めて重要だ」

次ページ > 永久凍土の融解で伝染性の病原体が放出される恐れ

翻訳=河原稔

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事