10月上旬くらいまでは半袖のTシャツ姿で外出していたのに、ここ数週間の気候の変化の早さには驚くばかりだが、ようやく野外で過ごすのも気持ちのいい季節になった。
今年も11月1日と2日、「羊フェスタ」が開催される。それまで日本では馴染みのあまりなかった羊肉や羊にまつわる文化を広めるべく始まったユニークな体験型イベントであるこの食フェスは、今年で10年目という節目を迎える。
例年、2日間で約3万人の来場者が訪れるイベントに成長したが、今回の出店ブース数は過去最高規模となる。
ジンギスカンやラムチョップのようなよく知られたメニューだけでなく、羊肉串やシチュー、ピタサンド、揚げ物など、羊肉をメイン素材とした多彩な料理を出すブースが並ぶ。またドイツのインポートビールやワイン、中国の白酒などのアルコール類も提供される。
会場となる中野セントラルパーク(東京都中野区)には緑の芝生が広がっていて、毎年そこはにわかキャンプサイトともなり、多くの人たちが羊料理とお酒を心ゆくまで楽しむ光景が見られる。
さらに、それらの飲食ブースに加え、羊毛やフェルトの雑貨、クラフト作品など、羊に関する物販や体験ブースも増え、大人から子供まで世代を超えて楽しめるワークショップもあるのが魅力だ。
羊フェスでしか体験できない食の体験
今日、日本で食される羊肉の99パーセントは輸入だという。羊フェスタを主催する「羊齧協会」代表の菊池一弘さんの著書『食べる!知る!旅する! 世界の羊肉レシピ 全方位的ヒツジ読本』(グラフィック社、2023年)によれば、2022年の輸入国の主な内訳は、トップがオーストラリアで70.7パーセント、次いでニュージーランドが27パーセントと両国で大半を占める。
以下、羊肉の輸入国は、アイスランド、フランス、アメリカ、アルゼンチン、イギリス、スペイン、アイルランド、チリ、イタリア、アンティグア・バーブーダなどさまざまな国に及ぶ。
ふだんは筆者もどこの国の羊肉かなどと意識して口にすることはないが、羊フェスタには、オーストラリアやアイスランド、アメリカ、英国ウェールズのラム肉の輸出促進協会のブースも出店しており、世界各地の羊肉を食べ比べできる。
産地の違いだけでなく、レッグやショルダー、Tボーンなど、メニューごとに異なる部位を使った特別な調理法で提供される料理もあり、これなどはこのフェスでしか体験できない食の体験だろう。
ちなみに、一般に「ラム」と呼ばれる羊肉は、生後1年未満の仔羊で、味にクセがなく、食肉としての香りも控えめだ。
なかには生後3カ月未満の母乳しか口にしていない仔羊の「ミルクラム」と呼ばれる稀少な羊肉もあり、筆者は味坊集団の梁宝璋さんの店「香福味坊」で一度だけ口にしたことがある。それは肉質の驚くほどの柔らかさと口に入れるとミルクが染み出てくるような不思議な食感だったことを記憶している。
一方、広く普及している「マトン」と呼ばれる羊肉は、生後2年以上のもので、欧州などの国々では「草の香り」を味わう食肉として愛好されている。ラムに比べ、脂肪燃焼を促進するL-カルニチンが多く、旨味も強いとされる。



