「羊フェスタ」での注目ブース
こうしたトレンドは一般の飲食チェーンにも影響を与えているようだ。たとえば、首都圏を中心に展開してきた居酒屋チェーンの「一家ホールディングス」では、「低脂質で高たんぱく質とされる羊肉が女性や若年層をひき付けている」ことから、羊肉を扱う飲食店を首都圏から地方に拡大するという(日本経済新聞オンライン版2025年8月20日)。
菊池さんも次のように語る。
「羊フェスタの来場者はコロナ禍前に比べて明らかに増えましたが、年齢層の中心は20代から30代で、カップルや家族連れも目につきます。これは一部の羊肉好きや美食家だけでなく、若い世代を中心に、いままさに一般の人たちがカジュアルに羊肉料理を楽しむ時代への過渡期なのだと思います」
こうした若い世代の消費者が羊肉を抵抗なく受け入れていく土壌が育ちつつあるなか、今後の羊肉食の展望はどうなのか。菊池さんは次のようにも話す。
「羊肉は生産にかかる環境負荷が低い食肉といわれます。また宗教的禁忌に触れることが少ない肉なので、インバウンド需要などでさらに消費が増える食肉ではないでしょうか」
確かにインバウンド需要を見越して、中国に住むイスラム教徒のために特別に調理した「ハラール中華」の店を始めるガチ中華オーナーも現れている。日本人が想像する以上に羊肉はインバウンド市場において重要な食材なのである。
最後に筆者が独断で選んだ「羊フェスタ」での注目ブースを紹介しておこう。
まずは、NYミシュランでの3つ星料理人である米澤文雄氏やラム肉ブームの火付け役の1人である関澤波留人氏などのスターシェフが集まる「ヒツジパブリック」だ。そして、北海道の旭川にあるジンギスカンの全国的有名店「成吉思汗 大黒屋」だ。
数あるブースのなかでもユニークなのは、オーストラリア産ラム肉の味の特性や認知度を高める活動をしている「ラムバサダー(LAMBASSADOR)」だろう。前出の味坊集団の梁宝璋さんもメンバーの1人なのだが、ジャンルや国籍を問わずさまざまな角度から「オージー・ラム」の魅力を発信する食のプロ集団である。
そして、おなじみの「味坊集団」ももちろんだが、今回初出店の東京の池袋にある新疆ウイグル料理店「大新疆」などのガチ中華系のブースもぜひ訪ねてみたい。


