6. モロッコ

モロッコは、まるでゆらめく蜃気楼だ。サハラの赤い砂丘は、果てしない静寂へと広がり、山頂に雪をまとうアトラス山脈は、オリーブ畑に彩られた谷間を見下ろす。フェズでは、モザイクタイルを敷き詰めた中庭や、刺激的な香りを放つ革の染料容器を見ながら、メディナ(旧市街)の入り組んだ薄暗く狭い路地を歩いてみよう。
マラケシュでは、鍛冶屋のハンマーの音や行商の呼び込みが黄土色の壁に反響し、ランタンを吊るした屋上カフェからはミナレット(尖塔)が見える。沿岸にある港町エッサウィラでは、潮風が青いシャッターを揺らし、塩がこびりつき崩れかけた城壁の上空をカモメが旋回する。
内陸では、節くれだったオリーブと、ねじれたアルガンの木々がシナモン色の丘に点在し、ベルベル人の集落がある急斜面には、数千年にわたる足跡が刻まれている。そしてハイライトは、リーフ山地の中腹に静かに佇む、シャウエンの青一色の街並みだ。
選定理由:マラケシュは、お買い得な長距離便の目的地として要注目。カヤックでの航空券価格は、2024年夏と比べて5%下落。
7. ノルウェー

ノルウェーは、冷たく澄んだ透明な魅力にあふれている。氷河が削り出したフィヨルドは、太古の爪痕のように大地に食い込み、天を衝くような松林が、鏡のように穏やかな湖面を見下ろしている。
首都のオスロでは、スマートなトラムが、ガラスケースのような博物館や緑豊かな公園のそばを、滑るように通り抜ける。はるか北では、大きく開けた漆黒の空に、まばゆい緑のオーロラが踊る。立派な角をもつトナカイは、雪化粧したツンドラを亡霊の影のようにさまよう。
荒々しい沿岸部では、急峻な崖の合間に漁村が佇み、陰鬱な空の下に、華やかな赤い家々が並ぶ。内陸部では、苔むした峡谷に、滝がいくつも連なってなだれ込み、中世の樽板(スターヴ)教会は、忘れられた信仰を厳かに守っている。
夏に訪れれば、深夜まで日が沈まないのはよく知られている。一方、冬の日照時間はわずかだ。
選定理由:カヤックのデータによれば、米国在住者によるノルウェー行き航空券の検索数は、2025年夏に25%増加した。さらに、オスロ行き航空券の価格は、英国発の便が20%、米国発の便が11%下落している。
8. モルドバ

モルドバ(欧州)は、静かな景観のなかに佇む国だ。日差しを浴びたなだらかな丘にはぶどう園が点在し、時間がゆっくりと流れる。首都キシナウでは、崩れゆくソビエト時代のファサードや街路樹が立ち並ぶ大通りをトロリーバスが通り過ぎ、市場の露店には、晩夏に収穫されたプラムや瓶詰めのピクルスがずらりと並ぶ。
東に向かうドニエストル川の流れは広くゆるやかで、河岸にある石灰岩の崖を掘って築かれた修道院や、石畳の中庭でニワトリが鳴くひなびた農村が見渡せる。岸壁に穿たれた古の石窟修道院「オルヘイ・ヴェッキ」で鐘が時を告げると、眼下の曲がりくねった道路よりも古い時代にタイムスリップするかのようだ。
秋は、コドリの森はにぎわい、湿った土からキノコが顔を出して、薪の煙と苔の香りが辺りの空気に満ちる。地下に隠れた広大なワインセラーは何kmも先まで続き、ひんやりした薄暗い空間に、帝国の興亡を見届けてきた年代物のボトルが並ぶ。
選定理由:モルドバは、あまり知られていないヨーロッパの宝石だ。キシナウへの航空券検索数は2025年、カヤックで前年比47%増加した。


