食&酒

2025.11.10 13:30

農業も飲料も。テクノロジーで食の未来を変える起業家たち

(c)Chitose Group

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「食を通じて、いのちを考える」を掲げる大阪・関西万博のシグネチャーパビリオン「EARTH MART」と Forbes JAPANが連動し、食の未来を輝かせる25人を選出した。生産者、料理人、起業家、研究者……。本誌 11月号では、豊かな未来をつくる多様なプレイヤーを紹介する。

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ゲノム編集がきりひらく日本の新しい養殖モデル

梅川忠典|リージョナルフィッシュ代表取締役社長

courtesy of Regional Fish
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「日本発の圧倒的にうまい魚を世界に届けること」を野望に掲げる梅川忠典は、必要な技術革新と制度設計に取り組む。アニサキスフリーのサバ、可食部が大きいマダイ、高温耐性の牡蠣のほか、すでに出荷実績をもつ水産物は、リージョナルフィッシュがゲノム編集や最新バイオ技術で品種改良した成果だ。

これらは単なる高付加価値化ではなく、環境変化や漁獲圧に左右されにくい養殖魚種として、日本の食卓と地域経済を支える新しい資源でもある。在来種保全の議論においても変化に適応させる手段があれば未来も広がる。変化する海洋環境に挑む技術は、水産業の未来を刷新する鍵だ。

梅川忠典◎デロイトトーマツコンサルティングを経て、産業革新機構でPE投資に従事。2019年リージョナルフィッシュ設立。ゲノム編集と養殖の技術を活用し高付加価値魚種の開発と持続可能な水産業モデルを国内外で推進。

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微生物を生かした循環型農業で、食文化の土壌を守る

藤田朋宏|ちとせグループ代表

courtesy of Chitose
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土壌劣化が進み、有機物の循環が失われている。農家による土壌を維持するための取り組みが経済合理性の理由で行われなくなりつつあり、作物の味や栄養価の低下が懸念される。時価総額1000億円を超すちとせグループ代表の藤田朋宏は、微生物を生かした循環型農業で改善に取り組む。廃棄物や未利用資源を微生物の餌とし、日本と東南アジアで良質な土づくりを行う農家に報酬制度を導入。センサーやデータ管理により、持続可能な農業モデルを実践する。

「良質な土壌を守ることは、出汁や醤油のような日本の味を未来に残すこと」。違いのわかる味覚を育み、食文化を次世代へとつなぐ。

藤田朋宏◎東京大学大学院農学生命科学研究科修了後、コンサル企業勤務を経て、2011年シンガポールにちとせグループを設立。微生物技術を活 用した光合成基点の社会構築をアジア6カ国で展開している。

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文=青山鼓

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