人は現在欠けている価値あるものを手に入れることよりも、持っているものを失うことを嫌がる。これにより新たな目標を達成しようとする意欲に、大きな違いが生じる。心理学ではこれを損失回避と呼ぶ。
専門誌『Journal of Experimental Psychology : General(ジャーナル・オブ・エクスペリメンタル・サイコロジー:ゼネラル)』に掲載された研究は、これが日常生活においてどのようなものかを示している。損失に対する恐れは新しい何かを得ることへの希望よりもはるかに強い動機づけになることが多いことが、4つの実験で明らかになった。
大きな成功を収めている人は、この損失を回避しようとする自然な傾向を意図的に利用している。彼らは潜在的な見返りだけでなく、失う可能性のあるものを活用して目標を定めることで、やる気を高めている。失敗や可能性を逃すことに対する恐れを、積極的に大きな原動力として利用しているのだ。
目標達成のための強力な原動力として、恐れを利用する方法を紹介しよう。
1. 「望む未来」と「望まない未来」両方を思い描く
「望む人生を創り出そう」と言われても、そのタイムラインは不明確で遠い。大半の人はその夢を完全に信じているわけではない。そうではなく、自分が受け入れ難いもの、つまり思いつきであれ過去の経験に基づくものであれ、あなたが軽蔑する行動や人、物事を特定することで、それが現実に存在し、具体的に感じられる直感的な反応が起こる。
専門誌『Journal of Personality Assessment(ジャーナル・オブ・パーソナリティ・アセスメント)』に今年掲載された研究では「動機づけを測るものとしての失敗に対する恐れ(FOFAMS)」を紹介し、失敗への恐れがネガティブなものだけでなく、効果的な動機づけにもなりうることを強調している。
研究では、失敗に対する恐れが一層努力したり我慢しようという気持ちにつながり得ることを示し、不安や回避の刺激としてだけでなく、建設的な動機づけとしての価値があることを実証している。その結果、恐怖をとらえ直し、目標に向けた取り組みに組み込むことで、集中力や努力を向上させ、何かを達成しようとしているときに前進し続ける助けとなることが示された。
これは損失回避の心理の原理と似ており、苦痛や失敗を避けようとする動機は、快楽や成功を求める動機よりも強くなる傾向がある。
日常生活でこれを活用するには、自分の完璧な人生を視覚化したビジョンボードを作ってみるといい。同時に、目標を達成できなかったらどうなるかを書いた「逆ビジョンボード」を頭の中で描く。完璧なビジョンとは正反対のもの、つまり、悪い習慣や有害な環境、決して経験したくない満たされないパターンなどを挙げておく。
このプロセスは気持ちの明瞭さと不快感を、方向性を決める燃料として使う。嫌悪するものが、愛するもののためのコンパスになるのだ。ビジョンに反するものは、成功の恩恵ではなく何もしないことの代償を明らかにし、それによって目標は確固としたものになる。損失回避や後退への恐れといった、より原始的な動機づけの仕組みを活用することで、変化が今にも起こりそうな具体的なものになる。
真のビジョンボードと逆のビジョンボードは、どちらもあなたの優先順位を明確にし、緊急性を高め、成長に向かって一貫した行動を起こさせる。この対比によって自分が何を望み、何を望んでいないのかが明確になり、動機がより具体的で強いものになる。



