働き方

2025.11.03 17:00

オフィス回帰は、オフィスの役割を再定義しない限り逆効果になる

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近年、出社を求める企業が増えている。ピュー・リサーチ・センターによれば、2024年には企業の75%が定期的な出社を義務づけ、2023年の63%から上昇したという。しかし、プロフェッショナル人材は反発しており、リモートワークが選択肢から外されるなら離職を検討するという声も多い。

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ただし、自社の方針を元に戻す前に、このリモートワークと離職の話は物語の一部にすぎないことを指摘しておきたい。ギャラップの調査では、多くの従業員──とくにZ世代──も完全なフルリモートは望んでいないことが示されている。リモートワークにはそれ自体の課題があるからだ。以下で詳しく述べる。

約20年にわたり自社を率いてきた経験から、問題は物理的なオフィスそのものにあることは少なく、むしろオフィスの従来型の運営方法にあるとわかった。出社義務だけでは人を呼び戻せても、居続けたいと思わせることはできない。著者が創業したJotform(ジョットフォーム)では、従業員にオフィスを選んでもらいたいなら、選ぶに値する場所にする責任は経営陣にあると認識している。以下にその方法を示す。ただしまず、なぜフルリモートに従業員が幻滅しているのかを詳しく見ておきたい。

在宅勤務の問題点

ヘミングウェイはかつて「執筆とは、どれほど成功したとしても孤独な営みだ」(“Writing, at its best, is a lonely life.” )と述べた。職業の中には本質的に1人で行うものがある。企業で働くことの大きな利点の1つは、必要ではあるが孤独になりがちな深い作業を、協働やつながりが相殺してくれる点にある。

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パンデミック下で、多くの人が初めて在宅勤務の孤立を経験した。最初は物珍しさで耐えられた。恒久的なオフィス離れではなく、一時的な中断のように感じられたからだ。しかしZ世代の多くにとっては、リモートまたはハイブリッド勤務がキャリアの出発点から当たり前だった。したがって、ギャラップの調査がZ世代を最も孤独な世代と示し、職場での人生評価がどの年代よりも低いと示していることは驚きではない。

同じ調査では、完全リモートの従業員はしばしば高いエンゲージメントを報告する一方で、全体としては「順調にやれている」可能性が低いことも明らかになった。ハイブリッドや出社型の従業員と比べ、怒り、悲しみ、孤独を感じる頻度が高いと報告している。

それは理にかなっている。同僚のいない働き方は、無音の白黒映画を観るようなものだ──本当に楽しい体験にする色彩や豊かさが欠けている。対面でのコラボレーション、給湯室での雑談、チームのランチは、仕事の日常に彩りを与える。

Jotformでは、人生が充実している従業員は仕事でもはるかに活躍することがわかった。エンゲージメントとウェルビーイングは切っても切れない関係にあり、持続可能なパフォーマンスと長期的な仕事満足にはどちらも不可欠だ。人が本当に来たいと思うオフィス環境をつくることは、エンゲージメントと長期的満足の双方を維持する上で重要な要素なのだ。

次ページ > 従業員をオフィスに引き戻す戦略

翻訳=酒匂寛

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