リーダーシップ

2025.10.29 09:00

歴史は繰り返す──「1929年(史上最悪の暴落)の再来」にリーダーはどう備えるべきか

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1929年から学ばなければ、歴史はおのずと繰り返すだろう――金融コラムニストのアンドリュー・ロス・ソーキンは、新著の中でそんな説得力のある主張を展開している。『1929 – Inside the Greatest Crash in History – and How It Shattered a Nation(1929年:史上最悪の暴落は、どのように国家を崩壊させたのか:未邦訳)』のなかで、ソーキンは以下のことを説明している。

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・好況と不況のサイクルは繰り返し、債務水準が高いときには悪化する。
・関税は国際貿易を窒息させ、それ以外にも意図せぬ結果をもたらす。
・リーダーはうぬぼれ、過信、権力に目をくらまされることが多い。

定義上、危機は大規模かつ一時的な変化の結果として生じる。ここでの落とし穴は、危機を乗り越えるのではなく、対処療法的に対応してしまうことにある。

基本的なアプローチは、事前に備え、出来事に対応し、ギャップを埋めていくことだが、その際には、危機のときにリーダーになるとはどういうことかを心に留めておく必要がある。

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危機のときにリーダーになるには、他者を鼓舞して能力と権限を与え、方向性、リーダーシップ、役割を明確にしつつ、おおむね正しい対応を迅速にとってから、進みながら適応していくことが求められる。

差し迫った「1929年の再来」という観点で見ると、これは以下のことを意味する。

・可及的速やかに、できるかぎり多くの種類の債務を減らす。
・危機の兆候に目を光らせ、手遅れになる前に対応できるようにする。
・戦略、組織、経営を、必要に応じてリセットすることで、危機を一つの変曲点として乗り切る。

事前に備える――債務の種類を減らす

ソーキンは、「すべての大規模な金融危機の裏には、ほぼ唯一の共通点が一つある――債務だ。これは、強力な楽観主義の力である」と書いている。さらに、債務は「未来の富を現在に引っぱりこむ。問題が生じるのは、我々が貪欲になり、多くをとりすぎたときだ」とも述べている。

ソーキンが言っているのは、金融的な債務のことだ。金融的な債務を心配すべきなのは当然だが、以下についても把握しておく必要がある。

・保守点検を先送りしていた資産、問題への対応、アップグレードを必要とするもののアップグレード、効率と効果を高めるものの追加。

・情報技術の不足、とりわけAI(人工知能)の活用方法の見極め。著作家のセス・ゴーディンがうまく表現しているように、一人ひとりがAIを自分のために働かせる方法を見つけ出すか、自分がAIのために働くことになるか、二つに一つだ。

・人的キャパシティや能力の不足につながる、雇用およびトレーニングの先送り。「部下の能力を限界まで活用すること」にも限度がある。すでに度を越して活用されている状態で危機に突入したら、壊れてしまうだろう。

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翻訳=梅田智世/ガリレオ

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