手遅れになる前に対応する
危ない兆しを無視するな、とソーキンは忠告している。そうした警告の多くは、すでに存在している。ソーキンは「1929年のようなリスク」を現代の我々が緩和できるように、当時影響を及ぼした役割上の権限や心理を掘り下げている。
世界は複合的で複雑であり、混沌としている、と言うだけでは足りない。自分が活動している状況を評価する際には、マイナス面とブラックスワン(予測不可能な)シナリオを考慮し、それを切り抜けるための真の非常事態対応策を構築するべきだ。
そうしたシナリオが現実になったら(いずれなるだろうが)、その非常事態対応策を実行に移し、物理的な安全、評判、財務を――この順番で補強する。
理解しておこう。ハードなことはやりたくないものだし、どうしてもやらなければならなくなるまで待ちたくなるものだ。1929年の教訓の一つは、「手遅れ」は思っている以上に速くやって来る、ということだ。
危機を、一つの変曲点として乗り切る
統計学者W・エドワーズ・デミングは、「すべてのシステムは、それが生み出す結果を生むように、完璧に設計されている」と述べた。Intel(インテル)のアンディ・グローブは変曲点について、「我々の考え方や行動を変える出来事」と定義した。
(1929年の再来のような)環境の変化や、野心の変化といったことが起きるときには、システムを変えて、自分への影響と効果を変えなければいけない。変曲点を通過しながら結果を加速させるなかでシステムが破壊されるのを避けるためには、戦略、組織、運営を同調させながら同時に変化させる必要がある。
注意すべきは、これは、「進歩を減速させるが、考え方や行動を変える必要のない出来事」とは異なることだ。戦略が引き続きうまくいくのなら、いったん立ち止まり、再編成してから、これまでどおり、できる範囲で進み続ければいい。
『1929年』の登場人物の一人であるウィンストン・チャーチル英首相は、「良い危機を無駄にしてはならない」と言ったとされる。良い危機を良いものにするには、それを「変化の土台」として利用する必要がある。組織が今後も繁栄していくためには、周囲を納得させることが必要だ。「起こす必要があるとすでにわかっている変化」をいますぐ起こす必要がある、と。


