なぜ“自分ごと”としての理解が必要なのか?
この個人の感覚が重要なのは、ここ10年ほどで、社会課題の「質」そのものが変わってきたということがあります。かつての社会問題は割とシンプルで、開発途上国の貧困問題のように、先進国は豊かで、開発途上国は貧しい、といったわかりやすい構図で考えられました。そこでは経済的に豊かになる、イコール社会問題は解決する、みたいな単純な図式が描けたのです。自分と社会問題は切り離せて考えていれたのです。
でも、今、豊かになったはずの欧米や日本でも社会問題は山積しています。高齢化も孤独も自殺もいじめもなくならない。温暖化もどんどん進む。
「誰かが解決してくれる問題」ではなく、 「自分たちのあり方が、問題を生んでいるかもしれない」という感覚へ。
たとえば、孤独な高齢者を生むのは、高齢化そのものではなく、人と人との無関心かもしれない。気候変動を助長するのは、大企業だけではなく、私たちの日常の買い物かもしれない。
つまり、「気づいて」「問い直して」「小さくても変えてみる」こと。それが社会イノベーションの出発点です。そして、逆に社会イノベーションを意識しながら小さな実践を積み重ねることで、その「感覚」を養うこともできるのです。
“希望を設計する”という冒険
社会イノベーションとは、今目に見える課題を解決するだけではなく、新しいパラダイムや関係性を創造的に生み出したりする可能性があります。それは、希望を設計する力になるのです。
たとえば──
● 地域資源を活用した循環型エネルギー事業をきっかけに、経済活動も地産地消型になる。
● 高齢者の孤独に寄り添う地域ケア・プラットフォームで、人々の未病対策につながり、地域医療に貢献する。
● 子ども食堂が、子どもだけでなく地域のすべての世代をつなげる場になる。
どれも、一つの課題を解決しようという取り組みから、社会の仕組みそのものを再構築しようとするチャレンジです。
制度や技術だけではたどりつけない、“関係性”を編み直すような創造。そこにこそ、社会イノベーションの面白さがあります。
誰もが持てる「教養」としての力
社会イノベーションは、NPOや専門家、インパクトスタートアップのものだけでもありません。
企業、自治体、大学、地域、そしてあなた自身が、この時代をつくる一員で、社会イノベーションを生み出すリーダーになりえるのです。
必要なのは、「問い続けること」「つながること」「動いてみること」。
本連載『社会イノベーションの最先端の教養』では、そんな“問いと行動のヒント”を、世界の最前線の実践や思想とともにお届けしていきます。
「社会って、こんなふうに変えられるんだ」
「自分にもできることがあるかも」
そんな小さなワクワクを、ぜひ一緒に探していきましょう。
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