政治

2025.10.24 08:30

進展なき停戦交渉、トランプ大統領はウクライナで失敗するのか

ウクライナの首都キーウで2025年8月28日、ロシアの弾道ミサイル攻撃を受け崩壊した住宅で消火活動と犠牲者の捜索を急ぐ消防士と救助隊。この空爆では少なくとも12人が死亡した(Pierre Crom/Getty Images)

ウクライナの首都キーウで2025年8月28日、ロシアの弾道ミサイル攻撃を受け崩壊した住宅で消火活動と犠牲者の捜索を急ぐ消防士と救助隊。この空爆では少なくとも12人が死亡した(Pierre Crom/Getty Images)

ウクライナでの戦争終結を目指すドナルド・トランプ大統領の試みは、失敗に向かっているのだろうか。トランプは停戦合意を強く求めている。しかし、この問題に関して焦りは禁物だ。

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残念なことにトランプが推進する和平案は、ウクライナの国家存続を脅かし、自由主義世界を根底から揺るがしかねない。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はウクライナに領土割譲を要求しており、これを受け入れてしまえばウクライナはロシアが再侵攻に踏み切った場合、自国を守り切ることが決定的に難しくなる。ウクライナが真に独立した国家たることを目指す和平目標を、トランプは放棄しようとしているのではないか──欧州の指導者たちは水面下でそう懸念している。

プーチンはトランプに対し、繰り返し嘘をついている。そしてトランプは、プーチンが思わせぶりな態度を取っていることを認識していると言明している。対抗措置としてトランプは、ロシア領内深くまで攻撃可能な長距離巡航ミサイル「トマホーク」をウクライナに供給するとほのめかして揺さぶりをかけ、対ロシア制裁の強化を宣言した。

だがトランプはウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領との会談で、トマホークの供与はせず、ウクライナは戦争に勝てないと伝えた。これが意味するメッセージは明白に思える。要するに、侵略を受けた民主主義国家はプーチンの要求の大半を呑むべきだということになる。

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この後退は、プーチンや中国の習近平国家主席に対するトランプの信用にどのような影響をもたらすだろうか。

トランプが今後もこのような方針を貫くならば、他の国々は歴史に残る実に恐ろしい結論に達するだろう。すなわち、米国はもはや信頼に足る同盟国ではなく、中国に迎合することを学んだほうがましだという結論だ。東欧や中欧だけでなく欧州全体が、中国だけでなくロシアにも追従せざるを得なくなるだろう。

韓国、日本、ドイツなどは、中国、ロシア、北朝鮮に対する抑止力として核武装すべきだとの結論に至るかもしれない。しかし、核兵器を保有したところで、これらの国々が真に独立した外交・経済政策を追求するのは難しいだろう。物理的な安全は確保できるかもしれないが、行動の自由は保証されない。

同盟国の不安は、トランプの関税政策によっていっそう高まっている。一部の国は、米国よりも中国のほうが信頼できる貿易相手国になるのではないかと自問し始めている。関税をめぐる米国の混乱ぶりは、世界一の経済大国の揺るぎなさに対する疑念を生んだ。絶えず混乱が続けば、永続的な平和と繁栄の基盤とはなりえない。関税そのものが、製品やサービスの生産者と購入者の間に楔を打ち込むのだ。

米国、欧州、日本の政府や中央銀行の失策により、世界経済は21世紀に入って25年が経過してなお、ほとんど進展を見せていない。その結果として政治的混乱が生じ、非伝統的でしばしば過激な政党が台頭している。欧州のこうした政党はプーチンに同情的な傾向がある。

ますます不確実になる世界情勢をめぐってさらに憂慮を深めざるを得ないのは、米政府が貿易収支を改善するためにドル安を望んでいるという認識が広がっていることだ。通貨安はまさに金融インフレの定義そのものだというのに、この危険な妄想は決して消え去らない。米国は1970年代と2000年代初頭にこの特効薬を試したが、どちらの場合も悲惨な結果を招いた。その影響は米国だけでなく、世界中に及んだのだ。

forbes.com原文

翻訳・編集=荻原藤緒

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