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2025.10.24 08:00

アップルがM5で始める”使えるオンデバイスAI”の時代

自社チップM5を搭載したMacBook Pro、iPad ProそしてVision Pro

素直にフレームワークを使って機能を作り込めば、今後もAIにフォーカスしたアップルのチップがもたらす恩恵を受けられる。

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そして、これらのAPIやフレームワークは、アップルのすべてのプラットフォームで共通に使うことが可能だ。Macで先行開発して洗練させた機能を、将来、iPadやiPhoneにも展開でき、それぞれのプラットフォームで適切なパフォーマンスを得ることができる。

新型Apple Vision Pro
新型Apple Vision Pro

M5から始まる“AI特化チップ”の歩み

M1が電力効率革命のゼロ年だったように、M5はオンデバイスAI革命のゼロ年になる。そう考えると、今後の展開が見えてくる。

M1の後、M1 ProとM1 Maxが登場し、より多くのCPUコア、GPUコア、メモリ帯域幅によって、プロフェッショナル向けの性能を引き上げた。M5でも同じ道筋が予想される。M5 ProとM5 Maxでは、GPUコア数が増え、それぞれにニューラルアクセラレータが搭載される。AI処理能力は、面積に比例して拡大する。

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アプリケーションも「AI前提のUI」へと書き換わる。待たせない、入力を減らす、文脈を自動で拾う。こうした新しい作法が常識になる。

写真編集アプリでは、被写体を選択する操作が不要になる。AIが自動で認識し、マスクを生成する。ビデオ編集ソフトでは、音声の文字起こしとシーン検出が自動で行われ、編集点の候補が提案される。3Dモデリングツールでは、ラフスケッチから複数のバリエーションをAIが生成し、デザイナーは選択と微調整に集中できる。

文書作成ソフトでは、箇条書きのメモから完全な文章を生成し、トーンや文体を自動で調整する。スプレッドシートでは、データの傾向をAIが分析し、可視化の提案を行う。プレゼンテーションソフトでは、テキストから適切なレイアウトと画像を自動で選択する。

これらすべてがオンデバイスで、プライバシーを保護しながら、低レイテンシーで動作する。M5という基準が確立されることで、開発者は「このレベルのAI処理は動く」という前提でアプリケーションを設計できる。

ユーザーは「どうやってAIを動かすか」ではなく、「AIで何を実現するか」に集中できる。これは、技術が隠れて道具だけが前面に出る──つまり、成熟の兆しだ。

M5は、見栄えの良いベンチマーク結果を最大化するためのチップではない。データの通り道を短くし、詰まりを取り除き、電力の無駄を削り、メモリ帯域を広げる──そういう「静かな変革」の積み重ねだ。

これは始まりに過ぎない。しかし、その始まりの質が、次の5年を決める。M5は、AI時代の新しい標準を作るだろう。そして、当たり前と感じる常識が変われば、その先のすべての未来が変わっていくはずだ。

編集=安井克至

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