ましてM5世代ではCPU、GPU、Neural Engineの三つが並行して動作する。言い換えれば、ユニファイドメモリを採用する利点が生きる場面であり、その帯域が強化されたことは、オンデバイスAIに対するアップルの本気を示すものともいえる。
ストレージの速度がおよそ2倍に強化されたのも同じ文脈だ。
最新のNAND技術により、シーケンシャルリード・ライト速度は前世代比で最大2倍に達した。RAW画像ファイルのインポート、ProRes動画の読み込みなどの「待ち」が半分になるが、多様なアプリケーションがさまざまな部分でAI機能を活用する際、AIモデルのロード時に起きる少しばかりの間を軽減するはずだ。
現実の処理では、これらの細かな「詰まり」解消が束になって効いてくる。
アプリケーションベンチマークの数字が語る現実
以下はMacBook Proにおける数字だ。
3Dレンダリングを行うBlender Benchmarkでは、M5は13インチM1 MacBook Pro比で6.8倍、M4比で3.9倍という数字を示した。
ゲームに関しては、Cyberpunk 2077: Ultimate Editionを中設定、MetalFX Balanced、レイトレーシング有効の設定で動かすとき、M5はM1比で2.6倍、M4比で1.8倍になるという。M4に対する高速化はダイナミックキャッシングが第2世代になった恩恵が大きそうだが、このおかげで60fpsに近いフレームレートを維持できていた。
XcodeでのプロジェクトビルドはM1比で2.1倍、M4比で1.7倍。こちらはCPUパフォーマンスの高さを示しているといえるだろう。
冒頭でも紹介したAdobe Premiere Proの「スピーチを強調」機能でM5はM1比4.1倍、M4比で1.4倍の処理速度。この機能は、録音された音声から背景ノイズを除去し、話者の声を明瞭に強調するもので筆者もよく利用するAI機能だが、待つ感覚がまったくなくなる。
プレビュー再生しながら、音声強調の効果を確認できるため、音を聞きながらパラメータを調整し再確認など試行錯誤のサイクルが待ち時間なしで回る。
ここではクリエイティブツールの多いMacBook Proで評価を行ったが、タッチパネルやApple Pencil Proを組み合わせることができるiPad Pro、ユーザーインターフェイスに制約はあるが空間表現が可能なVision Proでは、異なる使用シーンでM5の同じ「血」が通うことになる。
開発者への招待状
これはいわばAIをアプリケーションに活用したいと考える開発者への招待状ともいえる。
AIにフォーカスしたM5の機能(および今後登場するだろうM5 Pro、Maxおよび次世代チップ)にはOSのフレームワークを通じて、すぐにそのメリットを享受できる。Core MLやMetal Performance Shadersを通じて、Neural Engine、GPU内ニューラルアクセラレータ、CPUの振り分けをほぼ自動で行われる。


