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2025.10.30 15:15

400年続く化粧品メーカーの挑戦──再生からグローバル展開へ

株式会社桃谷順天館の社長、桃谷誠一郎氏

株式会社桃谷順天館の社長、桃谷誠一郎氏

「400年前から桃谷という名字は続いてきたんです」

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創業140周年、薬種商の時代にまで遡れば約400年の歴史を誇る老舗化粧品メーカー・桃谷順天館。
 
その現代表・桃谷社長は、日本が世界に誇る「長寿企業」の象徴的存在だ。

世界の100年以上続く企業のうち半数以上が日本に集中するが、400年という年月を超える企業は極めて稀である。だが、その長い歴史の中には、幾度もの試練と再生の物語があった。


大正時代に開設した、日本最古化粧品専門研究所
大正時代に開設した、現存する日本最古の化粧品研究所

広告戦略の成功と、その裏に潜んでいたリスク

かつて同社は、吉永小百合を起用したテレビCMなど、大胆な広告戦略を展開。

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「明色化粧品」として全国的な人気を博し、当時小売の巨人だったダイエーとの提携も実現した。スーパー店頭では“目玉商品”として販売され、売上は急伸。明色ブランドは一躍、時代の象徴となった。

しかし、その成功は長くは続かなかった。

ダイエーなどの量販店での値下げ販売が常態化し、薄利多売構造の中で広告費だけが膨らむ。

一時的に上がった業績はやがて失速し、赤字転落。経営は危機的状況に陥った。

銀行介入の時代、そして再生への一歩

業績悪化を受け、銀行主導による再建が進められた。

その最中、現社長・桃谷氏は「桃谷順天館を立て直してほしい」と当時の役員から依頼を受け、入社を決意する。

入社当時の会社は、売上を大きく上回る債務を抱え、給与の支払いにも苦慮するほどの最悪期だったという。

そんな中、桃谷氏は倉庫に眠っていた一冊の古文書に出会う。

それが、創業者・桃谷政次郎の理念を後継者たちが記した『桃谷政次郎翁傳』であった。

そこに書かれていたのは——

「天に順い、人々に奉仕する」

すなわち「順天」という創業精神。

桃谷氏はこの理念を経営陣と共に読み解き、原点回帰を誓った。

理念の再発見こそが、再生への第一歩となったのだ。

1885年創業当時のにきびとり美顔水と創業者 桃谷政次郎氏
1885年創業当時のにきびとり美顔水と創業者 桃谷政次郎氏

経営改革とV字回復──理念を実践へ

桃谷社長は「順天」の精神を現代経営に落とし込み、年功序列を廃止し、給与体系の見直し・年俸制導入・グループ経営の再構築など抜本的改革を断行した。

組織の活力を取り戻し、再び成長軌道に乗せた。

現場と研究所の給与バランスを是正したことで、社員の士気が向上。

遠方からでも働きたいという職人が現れ、若手人材も次々と参画。

「理念」と「仕組み」を両輪で動かすことで、企業はV字回復を遂げた。

桃谷グループ、株式会社コスメテックジャパン社長 伊勢 淳氏
桃谷グループ、株式会社コスメテックジャパン社長 伊勢 淳氏

次世代へのバトン──グローバルリーダー登場

再建を果たした桃谷社長は、次の成長ステージとして、グループの主力会社「コスメテックジャパン」の経営を、中国出身の若き経営者・伊勢社長に託した。

「私の時代と今では背景が全く違う。これからは“誠実と信頼”で勝負する時代です」

桃谷社長は、時代の変化を冷静に見極めながら、次世代が躍動できる舞台を整えた。

伝統を継承しながらも、革新を恐れない。それが桃谷流の“次世代経営”である。

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記事:戸村光 取材協力:園田 彩夏

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