ビジネス

2025.10.30 15:15

400年続く化粧品メーカーの挑戦──再生からグローバル展開へ

株式会社桃谷順天館の社長、桃谷誠一郎氏

グローバル化粧品OEMの革新者──伊勢社長が描く次世代モデル

「クライアントの想いを形にする。それが私たちの仕事です」

advertisement

OEM(受託製造)の世界で革新を続けるのが、コスメテックジャパンの伊勢社長だ。

有名格闘家のコスメ、有名YouTuberの香水など、話題性の高い商品を次々とプロデュースし、日本の化粧品OEM業界に新しい風を吹かせている。

異色のキャリアが生んだ柔軟な視点

伊勢社長は、中国系メガバンク、広告代理店、小学校英語教師という異色の経歴を経て、同志社大学で日本語を学び、大学院に進学。

advertisement

その後、桃谷順天館へ入社。入社、16年目でグループ会社のコスメテックジャパン社長に就任した。

「普通じゃない経歴が、むしろ強みになった」と伊勢社長は語る。

多様なバックグラウンドが、固定観念にとらわれない経営判断を可能にしている。

コロナ禍を“逆風”から“追い風”へ

2020年のパンデミックで化粧品業界が大打撃を受ける中、伊勢社長は中国で築いたネットワークを活かし、深刻なマスク不足に迅速対応。

「どこにもマスクがないのに、コスメテックジャパンなら手に入る」

 この対応力が高く評価され、新規取引先を次々と獲得。

危機をチャンスに変える経営判断で、同社を新たな成長軌道に導いた。

“誠実さ”を武器に世界市場へ

伊勢社長は、日本のOEMの弱みを「スピード」、強みを「誠実さ」と分析する。

「海外では1カ月で製品が完成しますが、日本では3〜4カ月かかる。しかし、日本企業は**表示成分と中身の差がない“正直な品質”**で世界の信頼を得ています。」

その誠実さを武器に、世界最大手のドラッグストアチェーンとも提携を拡大。

日本品質 × 世界販売という新しいバリューチェーンを確立した。

AI×人間力──次世代経営の形

会議は10分以内。AIで議事録を自動生成し、自らの意思決定データを学習させるなど、DXを自社運営に落とし込んでいる。

さらに、製品納品後のSNS運営支援やライブ販売のサポートまで伴走する。

「想いと予算だけご用意ください。あとの道のりは、私たちが共に走ります」

その姿勢に共感し、国内外からの依頼が絶えない。

伝統と革新、その交差点に立つ企業

コスメテックジャパンは今、400年の伝統を背景に、若手幹部主導でMVV(Mission・Vision・Value)の再定義を進めている。

創業者が築いた「順天」の理念と、伊勢社長が推進する「革新とスピード」。

両者が交わるその先にあるのは、伝統と革新が共存するグローバル企業という新たな企業像だ。

過去を誇るだけでなく、未来を切り拓く。

その姿勢こそが、次の100年を生き抜く日本企業の真の競争力である。

記事:戸村光 取材協力:園田 彩夏

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事