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2025.10.23 09:00

高市首相誕生で日本株は「大強気相場」に入るか 日本の変化に世界が注目

日本初の女性首相になった自民党の高市早苗総裁(Yuichi Yamazaki - Pool/Getty Images)

日本初の女性首相になった自民党の高市早苗総裁(Yuichi Yamazaki - Pool/Getty Images)

日本の憲政史上、初の女性首相が誕生した。自由民主党の高市早苗総裁が21日、衆参両院の本会議で第104代首相に指名され、世界のメディアと金融市場で大きな注目を集めた。高市の登場をたんなる象徴的な出来事として済ませるわけにはいかない。というのも、日本の経済や株式市場、企業文化はすでに、現代化や効率化に向けた大きな転換期に入っているからだ。投資家にとって、問いはシンプルにこうなる。これは日本の次の大強気相場の始まりなのだろうか?

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初の女性宰相はプラグマティックな保守政治家、「アベノミクス2.0」の兆し

高市の首相選出は、リーダー層のジェンダーパリティー(男女均等)が長年、経済の成熟度に追いついてこなかった日本で歴史的なブレークスルーになった。とはいえ投資家は、彼女がジェンダーの壁を破ったことを、イデオロギーの急激な変化と取り違えてはいけない。故・安倍晋三元首相の側近だった高市は、抜本的な社会保障制度改革よりも財政刺激策や産業政策、国家安全保障に注力する、プラグマティックな保守派として政治家の道を歩んできた人物なのだ。

高市による閣僚人事は、安倍の経済路線、いわゆる「アベノミクス」の継続を示唆している。アベノミクスは金融緩和と財政拡張、構造改革を組み合わせ、デフレ克服と経済再生を目指すものだった。高市はそれに独自の重点を加え、財政の健全性と積極的な景気刺激策の微妙なバランスを保ちながら、半導体やAI(人工知能)、防衛技術といった分野に政府投資を振り向けようとしている。

「高市ラリー」が起動、企業統治改革も追い風に

投資家は素早く反応した。高市の首相選出を受け、日経平均株価は内需株やハイテク株に牽引されて最高値を更新した。市場は、日本の新たな財政拡張と、かねて進められてきたコーポレートガバナンス(企業統治)改革が相まって、利益率やリターンは数十年ぶりの高水準に押し上げられるのではと期待している。

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確かに、日本の現在の市場動向は世界を見渡しても最も興味深いもののひとつだ。東京証券取引所は上場企業に対して、自己資本利益率(ROE)の改善や株式持ち合いの解消、現金のより生産的な活用を強く促してきた。資本効率の向上を明確な目的とするこれらの改革は、すでに取締役会の意識や投資家の見方を変えつつある。その結果、企業のバランスシートが強化され、配当も増え、バリュエーション(投資尺度)は米欧の競合に比べるとまだ魅力的な水準にある。長らく日本市場を「バリュートラップ(割安のわな。株価がいっこうに上がらず割安な水準から抜け出せない状態)」と見なしてきた投資家にとって、これらの構造改革はナラティブ(物語)を書き直す材料になっている。

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翻訳・編集=江戸伸禎

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