経済ナショナリズムと戦略的自律という世界的な潮流
もっとも、日本のマクロ経済環境は相変わらず厳しく、高齢化、労働市場の逼迫、根強いインフレ圧力など課題が山積している。だが、まさにこうした逆風こそ、日本に改革を迫っているとも言える。高市は戦略的投資の財源として、新たな国債を発行する案に言及している。ターゲットを絞った産業支援を通じて国の競争力の立て直しを図るこうした政策は、日本がかつて戦後復興期に進めた取り組みを彷彿させるものだ。
高市の政策の方針は、経済ナショナリズムと戦略的自律に向かう世界的な潮流と軌を一にしている。先端製造業、AI、サイバーセキュリティー、グリーンインフラ、防衛技術といった分野が、この方針から最も大きな恩恵を受けそうだ。また、消費関連の産業も、このほど閉幕した大阪万博のような大型イベントを前に、内需や観光を刺激する重点的な財政支出によって利益を得られる可能性がある。
サッチャーとメルケルの首相就任後、市場はどう反応していたか
もし歴史が何らかの指針を与えてくれるのであれば、投資家は過去にほかの国であった同様のリーダー交代の事例から安心感を得られるかもしれない。英国では1979年、マーガレット・サッチャーが女性として初めて首相に就任した。その最初の1年に、ロンドン証券取引所の主要株価指数はおよそ4.3%上昇している。また、ドイツで2005年にアンゲラ・メルケルが初の女性首相になると、フランクフルト証券取引所のドイツ株価指数(DAX)は持続的な上昇期に入り、就任後の1年でおよそ7%、1期目の4年間では60%あまり上昇した。
誰が政権を率いるかは、政治だけでなく市場心理にも影響を与える。実際のところ、政治面で象徴的な変化が起こるときには、同時に投資家のセンチメントや改革の勢いも変化する場合が多い。現在の日本も、構造改革による追い風と世界からの注目が交わる、そうした転換点に立っている。
高市政権には不安要素もいくつかある
もちろん、ニュースで大きく取り上げられたものがすべて強気相場につながるわけではない。高市政権に関しても警戒しておくべき要因がいくつかある。まず、高市の「連立政権」は自民党に日本維新の会が閣外協力するという形をとっているが、両党の議席を足し合わせても衆参両院で過半数に届いておらず、政権がどこまで長続きするのか疑問が残る。また、日本の債務の国内総生産(GDP)比はすでに相当高い水準にあるため、財政拡張は試練になりそうだ。さらに、高市は女性へのエンパワーメントを進めると約束しているものの、閣僚はほとんどを男性が占めており、社会の変化のペースが遅いことを浮き彫りにしている。


