ファンジュール家は、製糖・農業の「フロリダ・クリスタルズ」と砂糖ブランド「ドミノ・シュガー」を擁し、資産は約40億ドル(約6080億円)にも及ぶ。フロリダ・クリスタルズの共同会長兼共同CEOのホセ・“ペペ”・ファンジュールはトランプと40年以上の友人関係にあり、主要献金者として関係を築いてきた。トランプは就任直後にコカ・コーラへ米国産サトウキビ糖の採用拡大を求め、同社は今秋に米国内調達ラインの立ち上げを示した。
米国のコーラは甘味料に高果糖コーンシロップを用いるのが主流で、サトウキビ糖の製品は例外にとどまる。連邦の価格支持と関税により、米国内の砂糖価格は国際相場の約2倍で推移し、国内サトウキビ糖の供給者に有利な環境が続く。関係者によれば、コカ・コーラへの米国産サトウキビ糖ラインの供給候補にはファンジュール家が含まれる見込みだ。政府の価格支持と関税が続く限り、同家に追い風が吹く構図が見える。
トランプ、コカ・コーラCEOにサトウキビ糖の使用を要求
今年初め、トランプの2期目の大統領就任を祝うため、ワシントンを訪れたコカ・コーラのジェームズ・クインシーCEOは、手土産に大統領の愛飲するダイエット・コークの記念ボトルを持参した。しかし会談の場で、トランプが「なぜコカ・コーラはサトウキビ糖を使わないのか」と問いかけたことで、雰囲気が一変した。サトウキビ糖を使った「メキシコ・コーク」は米国でも人気だが、クインシーCEOは「供給量が足りないからです」と答えたのだった。
だが、トランプはその説明を受け入れなかった。7月に発売された書籍『2024: How Trump Retook the White House and the Democrats Lost America(2024年:トランプはいかにしてホワイトハウスを奪還したか)』によれば、トランプはすぐに40年来の友人であり、主要な政治献金者でもあるホセ・“ペペ”・ファンジュールに電話をかけたという。マール・ア・ラーゴの近くに住む81歳の砂糖業界の大物であるファンジュールは、トランプの年初の大統領就任式にも出席し、約100万ドル(約1億5000万円。1ドル=152円換算)を寄付していた。その通話が、就任後の数カ月に起きた出来事のきっかけとなったようだ。
夏にクインシーCEOが再びワシントンを訪れた際、トランプは再びサトウキビ糖の話題を持ち出した。その直後、トランプはSNSでこう投稿した──「コカ・コーラが新しい製品ラインを作ることになった。とても良い決断だ。見ていろ、“これのほうがずっといい!”」。
ファンジュール家が、コカ・コーラ新ラインの恩恵を享受か
その後、「ドミノ・シュガー」や「フロリダ・クリスタルズ」を傘下に砂糖・不動産帝国を操るファンジュールとその一族は、コカ・コーラとの取引獲得に向けて動いてきた。その事業全体の価値をフォーブスは約40億ドル(約6080億円)と試算している。
コカ・コーラは、米国内で生産されるサトウキビ糖を使用した新ラインを今秋にも発売すると発表しているものの、アトランタに本社を置く同社は、どこからその原料を調達するのかを現時点で明らかにしていない。同社は、フォーブスの取材にコメントを控えたが、事情に詳しい関係者によれば、「コカ・コーラはこの件を極秘に進めようとしている」としたうえで、「ファンジュール家がその供給元の1つになる」と認めたという。
この契約は、独占ではない可能性が高いものの、コカ・コーラが展開する「アメリカ産サトウキビ糖」ラインの恩恵を最も受ける立場にあるのがファンジュール家だ。
現在一家は、共同会長・共同CEOを務めるペペ(81)とアルフィ(88)、そしての上級副社長兼取締役のアレクサンダー(75)、アンドレス(67)、リリアン(87)の5人兄妹からなる。彼らが所有する世界最大のサトウキビ精製企業「フロリダ・クリスタルズ」の売上高は、2024年に57億5000万ドル(約8740億円)を記録し、米国内で生産される原糖の16%を同社が占めている。一家の事業には、砂糖精製所や不動産にとどまらず、ドミニカ共和国の高級リゾート「カーサ・デ・カンポ」も含まれる。



