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2025.10.27 08:00

「砂糖」で評価額6000億円、トランプから「甘い報酬」を受ける富豪一族のビジネス

ペペ・ファンジュール(Photo by Steve Eichner/WWD via Getty Images)

キューバ革命で資産没収、米国で再起したファンジュール家の歴史

ファンジュール家がキューバでサトウキビの栽培と製糖事業を始めたのは1850年代のことだった。やがて同家は国内有数の砂糖生産者へと成長した。兄妹の両親であるアルフォンソ・ファンジュール・シニアとリリアン・ゴメス=メナが1936年に結婚したことで、キューバでも最も裕福な2つの砂糖王家が結びついた。1959年までに一家の製糖帝国は、10の製糖工場とキューバ各地の不動産、ニューヨークのブローカーを抱えるまでになっていた。しかし、革命後、カストロ政権によってその資産はすべて没収された。

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「私は家族のオフィスに座っていた。そこへフィデル・カストロの部下たちがやってきて、今後どうなるかを話し合おうと言った。弁護士たちと一緒にテーブルにつき、私は黄色いメモ帳と鉛筆を手にしていた。すると彼らはテーブルの上に機関銃を置いたんだ」と、アルフィは2013年に母校フォーダム大学で行った講演で振り返っている。彼がちょうど革命が終わった年の1959年に卒業した大学だ。

「しばらく話をしたあと、リーダーの1人がその機関銃をつかみ、壁にかけられた地図に描かれた我々の所有地を指差してこう言った──『これらをすべて没収する』とね」。

一家はその後ニューヨークへ逃れ、他の裕福なキューバ難民たちと資金を出し合って64万ドル(約9700万円。現在の価値で700万ドル[約10億6000万円]以上)を調達し、フロリダ州オキーチョビー湖畔のパホキーに土地を購入した。続いてルイジアナ州の小規模製糖工場の古い設備を買い取り、バージ船で運び入れた。こうして1960年、彼らの最初のアメリカでの製糖工場が操業を開始した。

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約365億円の借り入れで事業買収、ファンジュール家の重大な転機

当時22歳だったアルフォンソ・ジュニア(アルフィ)は、父のもとで家業に加わり、やがてペペ、アンドレス、アレクサンダーもその後に続いた。彼ら兄弟が最初の大きな転機を迎えたのは1984年のことだった。彼らは当時パラマウント・ピクチャーズを傘下に持っていたコングロマリット、ガルフ・アンド・ウエスタンの砂糖事業を買収したのだ。買収資金をまかなうため、ファンジュール家は2億4000万ドル(約365億円。現在の価値で約7億5000万ドル[約1140億円])を借り入れた。後にペペが『ヴァニティ・フェア』誌に語ったところによれば、「あの取引が、私たちの名前を世に知らしめた」という。

それ以来、ファンジュール家は自らの存在感を巧みに示す術を身につけた。たとえばアルフィは、1992年の大統領選でビル・クリントンのフロリダ州選挙キャンペーン共同委員長を務めたことをきっかけに、クリントン政権との太いパイプを築いた。

クリントン大統領との直談判、政治献金で築いた影響力

1996年の大統領の日、ビル・クリントンがホワイトハウスの執務室でモニカ・ルインスキーと別れ話をしていたとされるその最中に、電話が鳴った。相手はアルフィ・ファンジュールだった。クリントンはその電話を取り、アルフィはフロリダの砂糖農家に1ポンドあたり1セント(約2円)の課税を提案したアル・ゴア副大統領の計画について、20分にわたり不満を述べたという。その説得は功を奏した模様で、当時の報道によれば、クリントンはひそかにこの計画への支持を撤回した。

「大統領に直接電話をかけて、しかも長時間話を聞いてもらえるというのは、彼らがどれほど強い影響力を持っているかを物語っている」とケイトー研究所のコリン・グラボウは述べている。

ファンジュール家の砂糖事業の売上は、1990年代後半までに2億7500万ドル(約418億円)に達し、一家が所有する農地の面積は最大の競合のU.S.シュガーを上回っていた。アルフィとペペは買収を加速させ、1998年にはニューヨークの製糖所を、2001年には2億ドル(約304億円)でドミノ・シュガーを取得した。同年、それらの製糖事業をASRグループとして統合し、その後C&Hなどのブランドも傘下に収めた。フロリダ・クリスタルズの売上高は2007年に30億ドル(約4560億円)にまで拡大した。

現在、世界最大のサトウキビ精製企業となったASRグループは、フロリダ・クリスタルズの完全所有下にある。同社には26年間、フロリダ・サトウキビ栽培協同組合が少数株主として出資していたが、2024年にファンジュール家が非公開の金額でその持分を買い取った。

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翻訳=上田裕資

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