正統的な政策はほかの面でも放棄されつつある。今年のノーベル経済学賞(正式にはスウェーデン国立銀行賞)の受賞者には、イノベーションを通じた経済成長の仕組みを解明した功績でジョエル・モキイア、フィリップ・アギヨン、ピーター・ホーウィットの3人が選ばれた。イノベーションの原動力になるものは高等教育や研究だが、米国型モデルのこれら2つの側面は弱体化されようとしている。
IMFとその会合が正統派の灯台だとすれば、米国のような政府はそれを通り過ぎ、財政的冒険の航海を続けているか、あるいはたんに財政の暗礁に向かって突き進んでいるようなものだ。もしその暗礁に衝突すれば、財政赤字は大きすぎ、債務は重すぎるというIMFのエコノミストたちの警告は正しかったということになる。そして、そのときにはもう救済のための資金はないだろう。
米国の銀行部門では、融資基準が緩められているのではないかと市場が疑念を抱くなか、危機の兆しが見え始めている。米地方銀行の株価指数は10月初めから10%下落しており、さらに下がる可能性もある。そうなれば、IMFにも何らかの出番が訪れるかもしれない。


