トランプ米大統領は17日、ウクライナのゼレンスキー大統領とホワイトハウスで会談したが、焦点になっていたトマホーク巡航ミサイルの供与に慎重な姿勢を示した。トランプ氏は記者団に公開された会談冒頭で、「トマホークは非常に強力だが、とても危険な兵器だ。多くの悪いことが起きる可能性がある」「我が国を防衛するために必要なものを供与したくない」「トマホークを考えずに戦争を終結させられることを願う」などと語った。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は9月26日 、トランプ氏がゼレンスキー氏に対し、ウクライナ軍が米国製の長射程兵器を使ってロシア国内を攻撃することへの制限を解除する用意があると伝えたと報道。バンス副大統領も同月28日、FOXニュースの番組で、ウクライナへのトマホーク供与を検討していると語っていた。トランプ氏は10月12日にも「戦争に収拾がつかなければ、トマホークを送るかもしれない」と語っていた。
トランプ氏らの発言がぶれた背景には何があったのか。米政府元当局者は、米政府関係者から聞いた話として「国防総省などはトマホークが戦争を終結させる切り札にならないとみている」と語る。トマホークは射程1千マイル(約1600キロ)以上とされる。ロシア国内奥深くまで攻撃できるが、戦略的に重要な施設に対するターゲッティングのためには、米国の情報が欠かせない。マーク・モンゴメリー元米海軍少将は英BBCに対し、トマホークには米国がウクライナに渡したくない特殊装備が必要だと説明した。モンゴメリー氏は、トランプ氏が、ターゲッティングや情報共有などによって戦争に巻き込まれることを嫌がるはずだと指摘していた。
上述の米政府元当局者は「トマホークも無限にあるわけではない。米国や同盟国が必要な装備を確保したうえで、ウクライナに渡そうとしても数に限りがあるし、提供できる時期も遅れる。ウクライナに渡せるトマホークの数と時期を考えた場合、ロシアに対する圧力として決定的な意味を持つとまでは言えない」と語る。
さらに、ロシアのプーチン大統領は16日、トランプ氏との電話会談でトマホークの供与問題について「ロシアが優位に立つ前線の状況を変えられない」「ウクライナ和平や米ロ関係に重大なダメージを与える」と伝えた。日本外務省幹部は「ロシアは核保有国だ。トランプ氏は当然、エスカレーションを懸念しただろう」と話す。トランプ氏がゼレンスキー氏に伝えた「多くの悪いこと」は、戦争のエスカレーションを念頭に置いた発言だろう。



