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2025.10.22 12:00

​​スヌープ・ドッグも虜にした「チキンフィンガー帝国」 資産3.3兆円創業者の軌跡

レイジング・ケインズ・チキンフィンガーズ 創業者 兼 CEOトッド・グレイブズ(Matt Winkelmeyer / Getty Images)

経営体制の強化を図るため、グレイブスは2017年に共同CEOとしてAJクマランを迎えた。クマランは、ハードロックカフェ、カリフォルニア・ピザ・キッチン、ピンクベリー(フローズンヨーグルトショップ)など、100店舗以上を展開する国際チェーンのCOO(最高執行責任者)を務めた経験を持つ、業界のベテランだ。クマランが日々の店舗運営を統括し、グレイブスは7万人の従業員の士気向上とブランド価値の強化に専念している。

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グレイブスは、常に駆け回っている。取材当日の朝も、カレッジ・ワールドシリーズを制したLSU男子野球部の選手たちを一号店に招き、店頭には高さ9メートルの虎のフロートを設置して勝利を祝った。翌日には約225キロを移動し、愛犬を伴ってフットボール界のロイヤルファミリーと言われるマニング一家(アーチー、クーパー、アーチ)とともにビデオ撮影に臨んだ。同日には、NBAのチャンピオンとなったオクラホマシティ・サンダーのアレックス・カルーソが、インスタグラムのプロモーションの一環としてレイジング・ケインズの店舗でシフトに入り、グレイブスはフェイスタイム越しに彼を祝福した。

グレイブスは年間の半分をバトンルージュの自宅を離れ、店舗視察やセレブリティとの交流に費やしている。昨秋には、ABCの人気ビジネスリアリティ・テレビ番組『シャーク・タンク』にゲスト出演し、複数のスタートアップに対して総額約70万ドル(約1億500万円)の投資を約束した。

グレイブスは年間売上高の約5%に相当する2億5000万ドル(約375億円)を、メディアとマーケティングに投じている。これは業界平均と同水準だが、彼は独自のアプローチをとっている。それは、全国CMを打つ代わりに、これまでに累計1億6500万ドル(248億円)を地元の慈善団体に寄付したほか、地域のスポーツチームを支援している。さらに、著名人とのコラボレーションによってブランド認知を高めてきた。転機となったのが2021年に実施したラッパー、スヌープ・ドッグとの企画だ。スヌープがドライブスルーで注文を受け取りながら、自身の新アルバムを配布するという映像は大きな話題をさらった。「大成功だった。有名人やインフルエンサーを起用すれば、低コストでも圧倒的な成果を上げられると気づいた」とグレイブスは振り返る。

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編集=朝香実

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