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2025.10.21 15:15

3分で読む坂口ノーベル賞。『美人キャラ 制御性T細胞と「免疫設計」が狙う超精妙』

イメージは筆者作成。制御性T細胞は、免疫システムにおいてとても重要な役割を果たす

イメージは筆者作成。制御性T細胞は、免疫システムにおいてとても重要な役割を果たす

今年のノーベル生理学・医学賞は、大阪大特任教授の坂口志文博士の受賞が決まった。受賞理由は過剰な免疫反応を抑える新しい細胞「制御性T細胞」の発見である。

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本稿ではライターの芹澤健介氏が、この「制御性T細胞」について改めて解説する。

芹澤氏は、「第5のがん治療法」と言われ、世界に先駆けて日本で初承認された「光免疫療法」の研究開発者であるアメリカ国立衛生研究所(NIH)主任研究員・小林久隆博士に密着取材した『がんの消滅:天才医師が挑む光免疫療法』 (新潮新書、小林久隆監修) の著者でもある。本稿でも、坂口博士の研究に密接に関連する小林博士の研究について併せて紹介していただく。また、記事末には小林博士からForbes JAPAN読者へのメッセージも収載した。


「次は坂口さんが獲る」

がん治療の現場を取材していると、「次のノーベル賞候補は誰か」という話題になることがある。この数年、そうしたときに、複数の医師や研究者が口をそろえて名前を挙げていたのが、坂口志文・大阪大学特任教授だ。長い間、「次は坂口さんが獲る」と言われてきた。

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彼が見出した「制御性T細胞」は、多くの健康な人にとっては耳慣れない細胞かもしれない。だが実際には、誰もがこの細胞の“お世話になって”生きている。複雑な人間の免疫システムを制御する、いわば“免疫の守護者”である。

当然、私たちの体には不可欠な存在だ。1980年代に坂口氏がこの細胞を発見して以降、花粉症やアトピーといったアレルギー疾患、関節リウマチや1型糖尿病などの自己免疫疾患、さらにはがんの治療まで、医療の数々の領域で飛躍的な進歩をもたらした。それらの背後には共通して、この「制御性T細胞」の働きがある。

英語では、Regulatory T cell、略してTreg(ティーレグ)。その名のとおり、免疫を制御する役割を担う細胞だ(ちなみにTというのは免疫細胞を教育する器官である胸腺を表すThymusの頭文字)。

では、この「Treg」は、免疫のどんな働きを、どのように制御しているのか。コロナ禍以降、私たちは「免疫」という言葉を頻繁に耳にするようになったが、その本質を理解している人は意外と少ない。免疫の仕組みをひもとくと、このTregがいかに精妙なバランスのうえに成り立っているかが見えてくる。そして坂口氏の発見が、どれほど医学と医療を前進させたのかも分かるはずだ。

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文=芹澤健介 編集=石井節子

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