「入れ替え可能」なほど役割を共有、信頼に基づいた組織運営
同様の関係は、業務効率化ソフトを提供するMonday.com(マンデー・ドットコム)にも見られる。同社の共同CEOで共同創業者でもあるロイ・マンとエラン・ジンマンは長年の友人であり、共通の価値観を持つ。マンは昨年のインタビューで、創業初期には2人がほぼ「入れ替え可能」なほど役割を共有していたと話している。
「どちらかが対応できないときは、もう一方がすぐに代わりを務めた」と彼は付け加えた。会社が成長し、従業員が2800人を超える規模となった今でも、2人は常に足並みを揃える努力を重ね、全社員が同じ目標に向かうよう意識を統一している。マンは、「私たちは全員が何を目指しているのかを理解できるよう、組織の方向性を揃えることに多くの時間をかけてきた」と語っている。
トップの座は役割の1つ、スウェーデン企業に見る新しいリーダーシップ
共通の理解に基づく経営体制の重要性を強調している例は、他にもある。今年5月からストックホルム拠点のフィンテック企業0TO9(ゼロ・トゥ・ナイン)の共同CEOを務めている、トード・トップショルムとジェシカ・ホルツバッハだ。トップショルムは先日のインタビューで、共同CEOという体制は「綿密に計画されたものというより、自然に形成されたものだ」という。その背景として「上下関係が緩く、合意を重視するスウェーデン的なカルチャーがある」と指摘した。「この体制を機能させるには、文字通りヒエラルキーを排した考え方が求められる」と彼は言う。
ホルツバッハは、ドイツで複数の企業を創業・経営してきたという経歴の持ち主だ。従来型の「創業者がすべての責任を背負う」体制ではなく、法律事務所やプライベートエクイティ企業のように、リーダーシップを共有するパートナーシップ的な経営スタイルに魅力を感じたという。そうした組織では、リーダーという役職は、上を目指した結果得るポジションではなく、「組織への貢献」として位置づけられることが多いと指摘した。
トップショルムもまた、「多くの企業では“トップの座を目指す”文化が根付いているが、それを望ましいとは思わない」と語る。「トップの座は“誰かがやらなければならない役割”にすぎない」と彼は付け加えた。
利益より大きな目的が重要、社員の自律性を引き出す経営哲学
トップショルムとホルツバッハは、Monday.comの経営陣と同じく、「従業員の邪魔をしないことが重要だ」と強調した。社員が企業の目的を中心にまとまっていれば、過度な指示や管理は不要だという。利益の達成そのものでは人は動機づけられないが、「より多くの起業家を生み出す」という目的を与えれば、「自然と財務的成果もついてくる」というのが2人の信念だ。


