もちろん、だからといって株式市場のクラッシュが近づいているとは限らない。ただ、1990年代後半のインターネットへの熱狂を経験した者として、投資資金がごく少数の企業に集中しすぎると何が起こり得るかを筆者は知っている。AI銘柄のプルバック(一時的な下落)が起これば、それは急激なものになりかねない。
金や銀への投資配分はなお過少
金と銀は7〜9月期に歴史的な値上がりを演じた。ウォールストリート・ジャーナルによると、金価格は9月30日、1トロイオンス3840ドルをつけ、同期の対ドル上昇幅は17%と過去最大だった。銀も1トロイオンス46.25ドルで取引を終え、四半期の上昇幅は29%とやはり過去最大を記録した。ちなみにこの銀価格は、米国の投機家ハント兄弟が世界の銀を買い占めようとしていた1980年の高値に迫る水準である。
驚くべきことに、貴金属は依然として投資ポートフォリオで著しく過小評価されている。米銀バンク・オブ・アメリカのストラテジストらは9月25日付のリポートで、金が個人投資家の資産全体に占める割合はわずか0.4%、機関投資家の場合も2.4%にとどまると指摘している。
「高バリュエーション・低利回り」という世界での分散投資の必要性に投資家が気づいたとき、金属・鉱山分野への資金流入は莫大なものになるかもしれない。
再注目される金鉱株
ラリー(相場上昇)は現物の金に限らない。長い間敬遠されていた金鉱株が、ここへきて再び脚光を浴びている。ブルームバーグ通信の集計によると、金鉱業界が7〜9月期に株式を通じて調達した資金は67億ドル(約1000億円)にのぼり、四半期ベースで過去最大だった。
香港の紫金黄金国際、中国本土の山東黄金、インドネシアのムルデカ・ゴールドによる大型の株式売り出しが牽引した。
嬉しいことに、バンク・オブ・アメリカは2025年の最重要投資テーマに金鉱株を選出している。ウランや防衛テック、さらにはAIをも抑えての1位だ。AIをはじめとするテクノロジーがニュースを席巻するこの年に、金鉱株が非常に大きなお墨付きを得た格好だ。


