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2025.10.16 09:45

プレシオサウルスの体温は魚なみの25度。クジラとの「生い立ち」の違い

プレシオサウルス(Getty Images)

プレシオサウルス(Getty Images)

ジュラ紀の海に棲んでいた首長竜「プレシオサウルス」と、白亜紀の海にいた滄竜「モササウルス」は、海中でも高い体温を保っていたと思われてきたが、じつはサメやマグロほどの低い体温であることがわかった。

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ジュラ紀から白亜紀にかけて海の最大の捕食動物であったプレシオサウルスとモササウルスは、どちらも恐竜ではなく海棲爬虫類だ。カメやトカゲなどの爬虫類は変温動物で、周囲の環境により体温が変わるのだが、古代の巨大海棲爬虫類は哺乳類と同じ恒温動物だったとする説が有力だった。

ところが、動物の骨や歯に含まれるリン酸の三酸素同位体組成からその体温を正確に特定する技術を開発した名古屋大学の大学院環境学研究科の三歩一孝特任助教らによる研究グループは、それを使って、プレシオサウルスとモササウルスの歯の化石と魚の骨に含まれるリン酸の三酸素同位体組成を詳しく比較したところ、なんと摂氏23〜25度であることがわかったのだ。これは一部のサメやマグロに近く、従来の説を覆す結果となった。

モササウルス(Getty images)
モササウルス(Getty images)

この技術は、歯や骨を構成するリン酸カルシウムが作られるとき、そこに含まれる酸素原子の3種の同位体の比率を調べるというものだ。ごく簡単に言えば、動物の体液の酸素同位体の比率から体温が正確に特定できる。

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だが、1億年も前の生物の体液は手に入らない。そこで化石のリン酸と今の魚の歯のリン酸の3種の酸素同位体の比率を厳密に調べたところ、代謝水の影響がほとんど見られなかった。ちなみに、海棲爬虫類の体液は、エネルギー代謝で作られる代謝水と餌とともに取り込まれる海水が混合したものだ。つまり、プレシオサウルスの体液は代謝水が少なく、ほぼ海水であることがわかり、そこから体温が特定できたというわけだ。

海棲生物の体液循環の違い。海棲爬虫類は体液が少ない。
海棲生物の体液循環の違い。海棲爬虫類は代謝水比率が低い。

体液に含まれる代謝水の量が非常に少ないということは、プレシオサウルスやモササウルスは大量の水にアクセスできる環境から進化した生物だとわかる。それに対してクジラは代謝水の割合が大きい。それは水が少ない、水が貴重な環境で生きていた陸上生物から進化したことを示す。

この研究結果により、古代の脊椎動物の生態や生理を推測する際に、温度という新たな条件を加えてさらに精度を高めることが可能になるほか、「その生物が生息していたローカルな環境や地球規模のグローバルな環境を復元するうえで重要な知見をもたらす」ことが期待できるということだ。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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