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2025.10.22 15:45

親友3人で一番「慎重なあいつ」が。無念の元記者精神科医、致死傷罪数値化に思う

中学時代からの大事な友、Yの遺影

中学時代からの大事な友、Yの遺影

「危なくないよな?」。「平気、へいき」━━そんな会話が加害者たちにあったのかどうか。

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観測史上、最も暑い夏が続いていた9月6日午後11時ころ。千葉市内の路上でひとりの男性が二人乗りビッグスクーターにはねられた。被害者は63歳の会社員Y.K.さん。彼は私の中学校時代からの親友だった。いや、過去形で書くのはよそう。Yの死を無駄にせぬよう、危険運転致死傷罪の新基準が出されることを多くの人たちに周知したい。

その夜、クリニック外来を終えた私は、精神医学講演会参加のため愛知から福岡に向かった。最終フライトにぎりぎり間に合い、ほっとして滞在先でくつろいでいる時刻に、あの事故が起きようとは想像すらできなかった。

翌日の講演中、スマホにYの携帯から着信があった。終了後、折り返し電話に出たのはYの奥さんだった。

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「主人が亡くなりました」

「えっ⁉」

中学3年で同じクラスになって以来、もうひとりの級友Fといつも3人で行動していた。3人とも別々の高校に進んだが、長期休暇になるとYとFは私の実家に遊びに来た。大学に入ってからも、2人は下宿にいきなり現れて私を連れ出した。自動車免許を取った大学2年の夏、泊まりがけで能登半島を一周した。

そのYが、死んだ。いや、話を聞くと殺されたと言って過言でない。

17歳の男子たち、居酒屋で飲んだ後二人乗り

相手は17歳の男子たちで、ビッグスクーターに二人乗り。彼らは居酒屋で酒を飲んだ後、運転の男が連れの高校生を送るために後部座席に乗せた。免許取得後の日にちも浅いだろうに。事故現場手前の防犯カメラに映った様子では、スクーターは蛇行運転だったとされる。運転者から基準値以上のアルコールが検出された。後部座席の男は「乗せてくれと頼んではいないと思うが、酒を飲んでテンションは高かった」と供述したという。

Yは、親友3人の中で一番慎重なやつだった。高校では柔道部で鍛えたが体格はふつうで、能登のドライブの時も常に安全運転だった記憶だ。心臓をわずらい、人工弁の手術をして「これであと20年くらいはもつ」と喜んでいたのは半年前のことだ。道路を横断するとき通常運転のスクーターを避けられないわけがない。

実は、しばらく前から当欄のネタを考えていた私は、Yの死という衝撃に対峙し、なんとしてもこの無念さを文字にしなくてはと思い詰めた。こんな理不尽があっていいものか━━。だが個人的な思いだけを綴っても、読者の胸に刺さるとは限らないと悩んでいた時、こんな記事が出た。

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文=小出将則

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