アート

2025.10.15 14:00

ソフィ・カルが描いた「ピカソの不在」ほか NYのペロタンで女性作家3人の個展 

アーティストのソフィー・カル。2023年10月1日、ピカソ美術館にて(Photo by Luc Castel/GettyImages)

アーティストのソフィー・カル。2023年10月1日、ピカソ美術館にて(Photo by Luc Castel/GettyImages)

パリのピカソ美術館は2023年、ピカソの没後50年を記念する「スペインの巨匠との対話」をフランス出身のアーティスト、ソフィ・カルに依頼した。コンセプチュアル・アートと写真を手がけ、ライターとしても活動するカルはこの展覧会について、ピカソに「押しつぶされる」ような恐れを感じたと明かしつつ、依頼に応じることにした理由について、次のように説明している。

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「偶然のことでしたが、コロナ禍に見舞われていた時期だったため、美術館に行った時にはピカソのすべての作品に、(保護のための)覆いがかけられていたのです……ピカソの亡霊と向き合うことができると思いました」

「全体としてピカソを中心に据えながら、ピカソを不在のものとして構成しました。それは拒絶ではなく、恐れからです。つまり、私は作品の記憶と向き合ったのです」

ニューヨークのギャラリー、ペロタンニューヨークで開催中の個展「Behind The Curtain」でカルは、「Phantom Picassos」(ピカソの幽霊、2023年)を展示する。

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同作は写真に収められたピカソの5作品、「The Death of Casagemas(カサヘマスの死)」「Bather with a Book(大浴場の読書)」「Paul Drawing(絵を描くパウロ)」「Man with a Pipe(パイプをくわえた男)」「The Swimmer(泳ぐ人)」に重ねて、ピカソ美術館のキュレーターや警備員、その他の職員たちによる作品の「説明」が書かれたものだ。

カルがピカソ美術館を訪れたときに「不在」だったため、実際には見ることがでなかった作品であり、そのことにインスピレーションを得て制作されたものだという。

もうひとつのシリーズ「Picassos in lockdown」(監禁されたピカソ、2023年)は、紙や布で覆われていたピカソのいくつかの作品を、カルがカメラに収めた大型のデジタルカラー写真で構成されている。

会場にはそのほか、「Because」シリーズ(2018年)の作品も展示されている。写真を入れた木製の枠にカーテンのような覆いがかけられており、そこに刺しゅうで、撮影した理由が説明されている。ほかのシリーズの作品にはもちろん手を触れることができないが、このシリーズだけは、来場者たちが自分でカーテンを開けて、写真を見るようになっている。

また、もうひとつの作品「In Memory of Frank Gehry's Flowers」(2014年)は、著名建築家フランク・ゲーリーから受け取った「つかの間の命の贈り物」を撮影した写真を集めたものだ。1984年にロサンゼルスで知り合い、カルのインプレサリオ(プロモーター)になると申し出たゲイリーはそれ以来、展覧会のたびに彼女に花を贈り続けているという。

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編集=木内涼子

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