専門誌『Journal of Macromarketing(ジャーナル・オブ・マクロマーケティング)』に掲載された最近の研究で、意図的に消費を減らし、自分の能力に頼るという自発的にシンプルな暮らしを実践している人は幸福度と人生の目的意識のレベルが高いことがわかった。
ニュージーランドの消費者を抽出して分析した結果、よりシンプルな暮らしを選んだ人は幸せを強く感じ、強い目的意識を持っていることがわかった。「簡単」や「便利」ではなく、「シンプル」という言葉がここで使われていることに注目してほしい。
これは、今日私たちの間で広まっているものとは正反対のことを物語っている。重要なことのためにスペースを作るという意図的な行為を通じて、快適さを欠く状況でしかウェルビーイングは根付かないかもしれない。だがここに問題がある。私たちは、手軽さが一番だとみなす文化に生きている。迅速な発送やワンクリックでの購入など、デジタルを活用したあらゆる「近道」は日常生活の大変な部分を穏やかにするという同じ目的のために役立っている。
よって、この研究は人工知能(AI)を活用した私たちの暮らしに対する警告を発している。つまり、暮らしが便利になればなるほど、私たちの多くは満足しなくなる。朗報もある。解決策も提示されている。幸福への道はすべてを合理化することではなく、少しの不便さを意識的に選択することにあるのかもしれないというものだ。
これはつましく暮らすことやすべてを諦めることではない。「もっと」求めるよりも「足るを知る」ことが快適に感じると認識することだ。そして、そのように認識するとき、自分の時間とエネルギーをつながりや成長、意味といった、はるかに大事なことに向ける傾向がある。
「自発的なシンプルさ」がうまくいく理由
研究者らは幸福を主に2つに分類している。1つはヘドニックウェルビーイングで、日々の喜びや満足の経験のことだ。そして、もう1つはユーダイモニックウェルビーイングで、自分の価値観に沿って生き、人生に方向性があると感じ、人として成長することを指す。ヘドニックウェルビーイングは通常、短期的に経験するものだが、ユーダイモニックウェルビーイングは進化し、正しく行われれば長期的に増大する。
興味深いことに、自発的にシンプルな暮らしを受け入れ、絶え間ない消費から離れることで、人はどちらの面でも自分を奮い立たせるものに自由に注力できるようになるようだ。
便利さは役に立つと同時に、私たちから主体性を奪っているかもしれない。あらゆる問題がアウトソーシングされたり、即座に解決されたりすると、私たちは能力や創造性を感じさせてくれる小さな挑戦を逃してしまう。
家庭の電気関係の問題を解決する、悲嘆にくれる隣人のために料理をする、スマホをいじる代わりに有意義な会話をするなど、自立した生活を経験することで、努力が実際にどれほど満足感をもたらすかを知ることができる。その満足感こそが長続きする幸福につながることが多いという研究結果もある。
しかし注意点がある。幸せを見つけるために、便利なものをすべて取り払う必要はない。その代わりに、恋愛関係、目的意識、自分の手で何かを作る誇りなど、自分の人生にプラスになるもののためのスペースを作ることに集中する必要がある。
この記事では、日常生活においてシンプルさをとらえ、もっと幸せを感じられる実践的で小さな変化を2つ紹介しよう。



