政治的な意味合い
ウクライナのオレクサンドラ・ウスチノバ最高会議議員は8月に筆者のインタビューで、キューバからロシアへの兵士派遣は必要性に基づくものではなく、政治的なものだとの見解を示していた。「北朝鮮とキューバによる兵士の供給は政治的なジェスチャーであり、ロシア軍の人員不足を示すものではありません」と彼女は述べ、こう続けた。「ロシアはおよそ2万人のキューバ人を採用していて、すでに1000人あまりがウクライナで戦っています。われわれは40人ほどを殺害しました。キューバ兵のパスポートも証拠として押収しています。これは彼ら(ロシア)が信頼できるパートナーがいると誇示するための動きです」
ドイツの国際放送局ドイチェ・ベレ(DW)によると、北朝鮮の国営メディアは最近、ウクライナで戦い、死んだ兵士たちを取り上げたドキュメンタリーを放映した。そのなかでは彼らの死を「英雄的な犠牲」として描き、捕虜になるのを避けるために手榴弾を爆発させて自決した2人の若い兵士を烈士としてたたえた。
ウスチノバは、ロシアの戦略的なパートナー国への依存は世界政治を再編している広範な分断の一環だとみている。「ロシアが追加で1万人の兵士を必要とすれば、パートナー諸国が送ることになります。北朝鮮兵たち自身はたいした見返りを得ておらず、大半は消耗可能な歩兵として使われています」
一方、キューバ側には経済的な動機とイデオロギー的な動機の両方がありそうだ。米ラトガース大学のアレグサンダー・モティル教授(政治学)は筆者の取材に「キューバ人兵士は非常に高い報酬を受け取っています」と話した。「戦死すれば未亡人が裕福になり、生きて帰れば本人が裕福な英雄になります。どちらにしても、キューバには切実に必要としているお金がもたらされ、政権はそれを自らの功績にできるわけです」
モティルによると、キューバの政権は公然とロシアに味方することで、自国の革命体制の威信を高めるとともに、「ワシントンへの当てつけ」をしようとしている可能性もある。「これは国内的に受けのいい、象徴的なジェスチャーになります」


