だが興味深いことに、違いがあった。そうした集中力や意志力の低下の程度は人によってまちまちだったのだ。そしてパフォーマンスを形成する2つの重要な要因があることがわかった。その要因は下記のとおりだ。
・コントロールの準備:タスクを開始する前にどれだけ集中力とコントロール力を発揮できたか
・疲労耐性:時間が長引くにつれて、集中力をどれだけ持続させることができるか
これらの結果を予測する特性は、多くの人にとって聞き覚えがあるだろう。考えがまとまっていて規律を重んじ、細心の注意を払う人は入念に準備し、疲労にも強かった。
加えて、心配事やストレスの悪循環に陥りにくく、さほど神経質でない人は、時間が経っても持ちこたえた。また、知性も重要だったが、これはじわじわ積み重なる疲労に耐えるときより「力強く始める」段階において力を発揮した。
これらの知見から得られる教訓は、10月理論の計画は勢いよく手帳に書いたものであってはならないということだ。実際に実行するときに現れる、エネルギーや集中力の低下を考慮しなければならない。未来の自分が計画を立てたときと同じようにやる気があるかのように計画を立てると、失望を味わうことになる。
そうではなく、疲労を覚えることを念頭に置いて目標を設計しよう。本を書きたいのなら、一番疲れているであろう仕事の後に毎晩書こうとは考えないことだ。自分のコントロール能力が高い朝の20分間のセッションに組み込もう。もっと健康になりたいのなら、やる気に満ちているからといって10月に週6日のエクササイズを計画するのはやめよう。疲労やストレスは避けられないと想定し、まずは週3日から始めるのがいい。
10月理論は、現実的な考えと組み合わせることで効果を発揮する。規律とコントロールは重要だが、意欲などの減退を考慮することも重要だ。そうすれば、疲労を感じるようになっても、完全にコースから外れることはなく、そうした事態はすでに計画に組み込まれている。
2. 12週間方式を使う
多くの人が10月理論を実践するのに苦労するもう1つの理由は、目標は1年を通して固定されたものと考えることにある。これが裏目に出るかもしれないのは、人生は変わるものだという事実に基づく単純な理由による。10月に重要だと感じたことが、3月には緊急性はないと感じるかもしれない。それでも多くの人は、もはや意味をなさなくなっても1月の誓いに頑固に固執する。
そこで取り入れたいのが「12週間方式」だ。多くの人にとって集中力を維持するには1年という期間は長すぎると主張する生産性の戦略家らにもてはやされている方式だ。彼らは12カ月で考える代わりに12週間サイクルで考えることを提案している。それぞれのサイクルが「1年」となり、毎週目標を達成し、振り返りの時間を持ち、方針を転換することもできる。


