ルール3:「怖くても実行する」
多くの人は、仕事を辞めるにせよ、アイデアを提案するにせよ、あるいは自信が持てない投稿を公開するにせよ、恐怖心が消えるのを待ってから行動に移そうとする。しかし、恐怖心が自然に消えることはほとんどない。
デナーは、幼少期から不安症に悩まされており、出産後には症状が悪化して人間関係に影響を及ぼし始めたという。「最も愛する人たちに短気でイライラした態度を取りたくないのに、不安に囚われるとどうしてもそうした態度が出てしまった」と彼女は語る。
「怖くても実行する」というルールは、恐怖心を克服することを意味するのではなく、恐怖によって貴重な機会を逃さないことを示している。nuudsがまだアイデア段階にあったとき、デナーは恐怖に駆られていた。「まるで2015年の自分に逆戻りしたようで、自分をさらけ出しながら『これ好き?』『これいい?』と確認しているような気分だった」と彼女は振り返る。それでもなお、彼女はブランドの立ち上げに踏み切った。
リスクとリターンは表裏一体であり、最も恐怖を感じる新規事業ほど潜在的なリターンは大きい。恐怖心は他者を遠ざけ、競争を減らすからだ。恐れながら事業を始めることは、好意的であれ批判的であれ、他者の反応に自らをさらすことを意味する。そんな状況で、デナーの次のルールが大いに役立つのである。
ルール4:「フィードバックは中立だ」
新規事業の立ち上げ期には、好意的なフィードバックに舞い上がったり、否定的な反応に落ち込んだりしがちだ。だが、デナーの起業家としての成熟度は、彼女のフィードバックへの向き合い方に表れている。「私はフィードバックを中立的なものとして受け止めている。ポジティブでもネガティブでも、それに過度に影響されるのは良くない」と彼女は語る。
彼女は、両極端なフィードバックを身をもって経験してきた。「人々に愛される瞬間もあれば、激しく批判され、炎上しているような時期もあった」と彼女は話す。それでもデナーは戦略を変えなかった。なぜなら、いずれの反応も、彼女にとっては自分の聴衆が誰であり、誰でないかを示すデータに過ぎなかったからだ。
重要なのは、フィードバックを科学者のように扱う姿勢である。全てのフィードバックは結論ではなく、新たな問いを導くデータだ。顧客から苦情が寄せられたときは、彼らが本当に解決を求めている課題は何かを探るべきだ。配送遅延への問い合わせなら、修正すべきシステムはどこかを検討する。製品への称賛であれば、どの要素が顧客の共感を呼んだのかを分析する。このように、好奇心を起点としたアプローチこそが、感情的な反応を排し、フィードバックを実行可能な知見へと変えるのだ。
nuudsが流通の混乱に直面し、顧客が数週間も商品を待たされる事態が発生した際、デナーはそれを失敗としてではなく、オペレーションを改善するためのデータとして捉え、原因を分析した。その結果、カスタマーサービス担当を10名増員し、配送センターを切り替え、さらに顧客への誠意を示すために無料製品を同梱した。「フィードバックは中立的な情報にすぎず、私たちがどう対応すべきかを考えるための材料に過ぎない」とデナーは語る。起業家は、この冷静な姿勢を保つことで迅速に方向転換でき、創業初期の試練を乗り越える原動力となる。感情を切り離すことで、他者から好かれようとする必要からも解放されるのだ。そして、この考え方は、彼女の次のルールへとつながっていく。


